2019年09月27日

【内政】 埼玉知事選 野党共闘だけが勝因ではない 護憲・反戦のみでは与党に負ける

埼玉県知事選挙は8月26日に投開票が行われ、野党4党(立民、国民、社民県連支持、共産県委支援)が推す前参院議員(国民民主党)の大野元裕氏(55)が、自民、公明推薦でスポーツライターの青島健太氏(61)ら4人を破り初当選した。投票率は前回より約5%上昇し32・31%。立候補者は5人だが、大野氏と青島氏の事実上の一騎打ちで、得票は大野氏約92万票で青島氏約86万票。  

大野氏は参院議員だが知名度では、元プロ野球選手でメディアへの露出が多い青島氏が勝っていた。当初は青島氏優勢との見方だった。これに対して野党4党が「足並み」を揃え大野氏を推し、「自民・公明VS野党」の与野党対決という有権者にとって分かりやすい構図に持ち込むことができた。投票率も上がった。これが大野氏勝利の土台となった。  

しかし7月の参院選挙の結果でも分かるように与党堅調の流れの中で野党4党共闘だけでは勝てなかった。キーマンとなったのは、自民党と対峙してきた現職の上田清司氏(71)。大野氏を全面的に支援、知名度向上を図かり終盤での逆転をもたらした。  

知事選に限らず、選挙はそれぞれ特有の事情を抱えている。外から見ていては、分からぬ「内の事情」がある。上田氏の全面的支援、大野氏の地元で大票田の川口市での保守分裂、女性参院議員の知事選出馬断念などの環境が重なり、それらを、大野氏側は、上手く自分の「環境」とした。埼玉県の場合は、1972年に社会党の衆院議員だった畑和(やわら)氏が当選し革新県政が誕生した。当時は、東京都、神奈川県も革新都政、県政で革新が強い支持を得た。他の革新知事が退場するなかで、畑県政は5期20年続いた。保守県政を経て、民主党衆院議員だった上田氏が知事に当選し4期務めた。埼玉の都市部は、高度成長以来人口が増え、有権者は無党派層が多くなった。党派色は嫌うが、変化は求める。保守系が強い一方で変化を受け入れる選挙風土になった。大野氏自身も保守を地盤とし保守票を取り込んだ。そのような環境の中で大野氏は勝利した。要因が4野党共闘だけではない。  

今回の知事選では、国政レベルの争点はなかった。さまざまな事情や環境が絡んだ上での大野氏勝利であり野党共闘だけでは苦杯をなめたであろう。ここは冷静にみる必要がある。  

在京メディアは、知事選の結果をすぐに、国政への影響と結びつけようとする「くせ」がある。東京が地方を見るワンパターンの思考だ。だから、この原稿も「野党共闘」勝利とは書かない。JCJ機関紙だからこそ、あえて書かせていただいた。  

衆院選では野党共闘を築くとともに、選挙区ごとの特殊事情を踏まえ、あるいは乗り越えて、有利な環境作り出すことが勝利につながっていくであろう。「憲法守れ」「戦争反対」の訴えは大事だが、それだけでは、与党候補には勝てない。野党共闘を土台に、選挙区ごとの事情、「天・地・人」をいかに味方につけるか、それを、今回の埼玉知事選は、示唆しているのではなかいか。ちなみに参院補選は上田前知事が出馬を表明し「鉄板」なので勝利は揺るがない。

佐藤達哉(JCJ会員・さいたま市)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 10:35 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする