2019年09月30日

【リアル北朝鮮】 無策の幹部らを叱責 金委員長 台風緊急対策会議で

9月6日、北朝鮮で朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議が緊急招集された。軍事委員会拡大会議が緊急に招集されたと聞いて、最初は少し驚いた。米国との関係が進まないから、満を持して「核開発の再開」でも発表するのではないかと。

 だが、会議の議題は台風13号。金正恩・朝鮮労働党委員長も参加して対策を討議した。朝鮮半島を北上中だった台風13号の強さや特徴、被害が予想される地域や規模の分析を聞いた後、金委員長は激怒したと、6日発の朝鮮中央通信が報じた。金委員長が激怒した理由は、強い台風が近づいているのにその深刻さが分からず、何の対策も立てずに旧態依然とした対応しかしていないからだった。そのため、金委員長自ら対策会議を招集し、幹部らにきちんとした対策を講じることを命じたわけだ。

 1996年に朝鮮新報平壌特派員をしていた際、大規模な水害が起きた。台風によるものではなかったが、95年に続くもので、北朝鮮の南側地域を中心に甚大な被害が出ていた。特派員として、被災地を訪れ取材した。水浸しになった工場、壊れた橋、倒壊した建物などを目撃し、被害の大きさに呆然とした。当然死者も出ていた。なかでも農作物の被害が大きかったことを覚えている。もうすぐ収穫を迎える時期で、農民たちの落胆も大きかった。黄海南道の延安郡では、急激な豪雨で大量の水が一気に流れ、短時間で田畑が浸水した。「稲穂が芽吹き始めた時に4日間も浸水したので減収は否めません」と、郡関係者は私の取材に語っていた。

 23年後の今回も、金委員長が最も心配したのは農村だった。1年間一所懸命に作った農作物の被害を最小限に抑えるよう強調した。

 北朝鮮で台風に向けた緊急対策会議を報じるのは珍しい。最高指導者が直接この類の会議を指導するのも稀だろう。金正恩時代になって、統治スタイルが変化していることの証左でもある。

文聖姫(ジャーナリスト・博士)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 10:47 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする