あいちトリエンナーレは3年に一回開かれる国際芸術祭で2010年から始まっている。街角でポスターを見る程度の私は、これまで会場に足を運んだことはなかった。
ところが8月1日のトリエンナーレ開会早々、企画の一つ「言論の不自由展・その後」への脅迫や政治家の介入発言で3日目に中止になった。ツイッターやメールでは「愛トレ」などの愛称が飛び交うほどで、私も初めて見に行った。
主催する愛知県のホームページ(HP)などで動画や写真入りでこの企画が紹介されており、関心のある人たちは開会前からいろいろ反応していたようだ。企画を快く思わない人たちも情報を拡散した形跡が読み取れる。
時あたかも日韓の政府同士の対立がけたたましい折の開幕で、反韓・嫌韓の潮流が水面下に淀んでいた。そんなこともあって「平和の少女像」が目の敵にされたのだろう。主催者に対し電話やメール、ファクスで抗議の声が大量に寄せられた。「少女像の展示をやめろ、さもなくばガソリン持参で」というファクスもあり、その上に河村たかし名古屋市長の「少女像展示は日本国民を踏みにじる行為」の発言も重なり、主催者は不自由展の中止を決めた。
代表の大村秀章愛知県知事は理由について「会場の安全が保てないから」としているが、警備陣はガソリン男にしてやられるようなヤワではない。派遣された沖縄で暴言を吐きながら座り込みを排除し、その違法性を名古屋地裁に訴えられているほどだ。
トリエンナーレの主催者の会長代行でもある河村市長発言は「身内から飛んだ矢」の役割を果たしたと思う。
エスカレートする嫌韓ムードへの抗議か、ある集会でこんな日本人女性を目にした。平和の少女像の展示に似た一組の椅子が壇上に置かれ、左側に像ではなく、その女性が韓国の民族衣装をまとって座っていた。集会の開始から終了までじっと座っていたが、大きな決断が読み取れた。私はその写真を自分のフェイスブックに載せた(事後に彼女の了承を得た)。彼女に対する攻撃があったら私は断固戦うつもりだ。
加藤 剛(東海支部)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号