2019年10月11日

【JCJ賞受賞者挨拶】 「想画」と治安維持法にスポット 山形放送・伊藤清隆報道制作局長 児童文学者の教育を活写

 2017年、「共謀罪法」が成立しました。戦前の治安維持法に似ていると言われます。

山形県の小学校で昭和初期、後の児童文学者国分一太郎が青年教師として想画と綴り方教育を実践しました。子供たちは貧困の中で生きる自分たちの暮らしを、豊かな表現力で描きました。

 ところが、この教育が治安維持法に違反するとして、国分は逮捕、投獄され、有罪判決を受けました。私たちはこの事実に光を当てれば、治安維持法と共謀罪法の関係を伝えることが出来ると考え、番組作りを始めました。国分の教育実践をどう映像化するかが課題でした。「民放なのに、良くこんなテーマを選んだね」と言われましたが、何とか骨太の番組にしようと取り組みました。

 私たちは、国分の教え子を訪ねて、取材しました。皆さんは90歳を超えていましたが、「素晴らしい先生に巡り合えた」と、国分の教育を昨日のことのように克明に記憶し、嬉しそうに語ってくれました。国分先生が突然教壇を追われことへの疑問を、今も胸に刻んでいます。

 共謀罪成立をきっかけに始めた番組制作は、今思えばギリギリのタイミングだったと考えます。この番組を放送したからと言ってテーマが終わった訳ではありません。共謀罪がどう運用されるかを、見落としてはなりません。

 ここプレスセンターは、ジャーナリズムの殿堂です。企画書では、忖度とか息苦しい時代の中で、伸び伸びと明るい表現の未来に向けて、ある歌を思いながら「釘を一本打ち込みたい」と書きました。その歌は、与謝野晶子の和歌です。「劫初(ごうしょ)より 造り営む 殿堂に 我も黄金の 釘ひとつ打つ」。

 「劫初」とは、「人間の営みの初め」という意味です。これからも、2本、3本と、釘を打ち続けたいと考えています。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 17:11 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする