2019年10月12日

【JCJ賞受賞者挨拶】 福島原発事故直後の医師らの奔走と苦悩 NHK 鍋島塑峰ディレクター 教訓を生かせるか見たい

受賞にあたり、取材に応じて下さった医療関係者、諸先輩の顔が浮かび、番組作りに一緒に携わってくださった方々に感謝します。

私はディレクターとして2015年から3年間、福島局に勤務しました。福島で自分は何をテーマにし、取材するのか。その時、原発事故で避難する際、入院していた方々のうち亡くなった方が多くいることを知りました。事故直後に住民がどのように避難し、どうして命を救えなかったのか、国の被爆医療態勢はどうだったのか。それを最前線に飛び込んでいった医療者の目線で描こうと思いました。そして企画から放送まで3年がかかりました。

 現場に入った医師たちは鮮明に記憶していて、そこに体温を感じました。医師たちは学会でその体験を発表し、その中で泣かれる人もいたし、もっとできたのではないかと後悔の念を持つ人もいました。原子力安全神話の中で十分な準備はなく、そして自分のことではなく他人事だと思っていたのです。医師たちは、過去ではなく、今にも通じる問題としての認識を深め、国の医療態勢の充実を訴えています。

 番組の伝え方としては、医師たちが現場でスマホなどで撮影した3000枚の映像を元に時系列で伝える方法を取りました。事故直後には大手メディアは避難し、現地の記録はあまり残っていません。これに対し医療者は直後の映像を残していて、それは、歴史的にも価値があります。3000枚の一枚一枚に、そこから匂いが立ち上るような・・・それぞれの医師たちの記憶がこめられている写真をもとに、同じ時間、どこで何が起きていたのか、いわば横串にすることで、立体的に番組化していきました。

 国策としての原子力政策、国の責任は一体どこにあるのか。事故の教訓をどういかしていくのかを見続け、問い続けていきます。

10年、20年、50年後にも、原発事故の直後に医療の最前線で何が起きていたのか、教訓としてくみ取れるような記録を残していきたいという思いで番組を作りましたJCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年9月25日号
posted by JCJ at 11:21 | JCJ賞情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする