2019年10月24日

【おすすめ本】田島泰彦『表現の自由とメディアの現代史 統制される言論とジャーナリズムから遠ざかるメディア』─浮かび上がるメディアの劣化と民主主義の衰退=丸山重威(ジャーナリズム研究者)

 「この国の表現の自由はどこまで来ていて、これから先どこに向かうか。メディアはその任務と役割どう果たし、どこに進もうとするのか」―。
 冒頭にある通り、研究者の立場で、常にメディアの実態に関わりながら発言を続けてきた著者の2007年以来の論考である。その時々、法律雑誌や「週刊金曜日」「世界」などの寄稿原稿を元に、編年的にたどり、問題点を指摘している。

 時代をともにし、メディアのあるべき姿とジャーナリズムを考えてきた立場から言えば、まさに「継続は力」で、新しい状況が展開しているだけに、その都度、問題を落とさず記録することの意味は非常に大きい。
 例えば、私たちも著者も一緒に取り組んだ個人情報保護法の問題は、その後マイナンバー制度が生まれ、最近では企業が就活生の個人情報を材料に、リクナビの閲覧履歴などで人工知能による辞退率が取得される仕組みが生まれ、厚労省が「指導」した。
表題の「表現の自由」は、「表現の不自由展」の中止が大問題になっている。こうした「現在史」は過去の問題ではなく、「今の問題」そのものだ。

 この間、露骨に進んだのが、メディアの「劣化」であり、民主主義の「衰退」。本当に日本は大丈夫なのだろうか。
昔、メディアへの圧力や干渉について取り上げると、「知りたいのは、メディアへの『被害届』ではなく、どうしたら問題が起きないようにするかだ」と、よく言われた。
 しかし、昔も今も、「特効薬」はないだろう。大事なのは、一つ一つの問題をごまかさないで、忘れないで、問題提起していくこと。それが、民主主義社会のジャーナリズムの基礎だろうと思う。
(日本評論社2200円)
「表現の自由とメディアの現在史」.jpg
posted by JCJ at 10:47 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする