2019年10月27日

氾濫する嫌韓情報 不健全のバロメーター メディア間で批判起こらず 画一の内容 危険な道=李 洪千

2万165分。7月から9月10日まで、韓国を扱った放送時間の合計である。そのうち文在寅大統領に関しては1万399分放送された。徴用工は2669分、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)は、3614分放送された。韓国の者国法相任命を巡る国会の聴聞会報道は1649分だった。

 韓国関連については6324件が放送された。文大統領に関するニュースは1955件であり、徴用工は659件、GSOMIAは739件、聴聞会は280件となる

偏った過剰報道

 テレビで放送された時間だけを見ても韓国については、情報過剰の状態である。問題は放送時間の長さだけではなく、内容における偏りにある。ある民放の情報番組は、韓国で政治的スキャンダルとして政治的対立の原因になっている者法相関連のテーマに30分以上の時間を割り当てている。その内容を紹介すると、法相の親族を巡り法曹界が大混乱。親族の捜査状況、司法の分断が国民の分断へ飛び火、法相をめぐり国民が二分、文大統領の支持率は、対日姿勢の変化は?など細かく事件に関する情報を提供している。

 これらの放送内容の大部分は韓国の保守的立場をそのまま引用しているおり、イデオロギー的バランスが取れていない。30分も放送するなら反対の立場も紹介できる時間はあったはずなのに、放送内容やコメンテーターの発言から反対の言い分が紹介されることはなかった。

 また、引用されている韓国のメディアは朝鮮日報や中央日報のような保守紙一色である。これらの新聞は文政権に批判的な立場を取っている。特に者法相の任命を巡る一連の流れを紹介する情報はありすぎている。

 クリッピングサービスELNETで検索してみると7月1日から10月17日までに「者国」では1257件が検索された。「文在寅」で検索すると4802件が検出される。

他に類例がない

隣国について関心が多いのは当然のことであろう。関心の過剰はメディアの信頼を損なうことになる。例えば8月27日に行われたTBSのゴゴスマでの武田邦彦中部大教授の発言は、メディアの社会的責任が問われることとなった。彼は生放送で日本人女性が韓国人の男性に暴行を受けた事件に関し「これは日本男子も韓国女性が入って来たら暴行せにゃいかんやかどね」と発言した。

「韓国なんでいらない」という特集を組んだ週刊ポスト(9月13日号)はメディアの役割を自ら否定するに等しい内容だ。

 特定の国を軽蔑し、嫌悪感を煽る情報が容認されることは、世界で類を見ることはない。嫌韓情報が容認されることは、日本のメディアと社会が健全ではないことを示すバロメーターである。

もっと危険なのは増悪を煽る報道・放送に対するメディア間の相互牽制・批判が働かないことだ。相互批判がないのは、メディア内容の画一性を助長し、社会を危険な道に導かせる。

今の状況はまさに危険を知らせるシグナルであることに早く気付くべきだ。

 李 洪千(東京都市大学准教授)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 11:12 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする