2019年10月28日

【植村東京控訴審】決定的「新証拠」提出 音声テープが「捏造」はウソ裏付け=神原元

経緯
 91年に最初に名乗り出た従軍慰安婦・金学順さんの記事を書いたのは当時の朝日新聞・大阪社会部の植村隆記者であった。とりわけ97年頃から「慰安婦否定」歴史修正主義者の暗躍が強くなり当該記事を「捏造だ」とする攻撃が始まり、2014年1月「捏造」攻撃の先頭に立っていた西岡力氏のコメントが週刊文春の嫌韓特集に掲載されたことから「植村バッシング」が激しくなり、当時非常勤講師を務めていた大学には誹謗中傷のメールやファックスが殺到し、学生や植村氏の家族への危害を宣言する脅迫状も届いた。植村氏が自己の名誉を回復し家族の命を守るため、西岡力と文藝春秋社を相手取って東京地裁に訴訟を提起したのは2015年1月9日であった。

 2019年6月26日、東京地裁(原克也裁判長)は、植村氏の請求を棄却する判決を下した。判決は植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかったという意味において、意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実相当性(そのように信じるにつき正当な理由があったこと)を認め、植村氏が「意図的に、金学順が女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたとの、事実と異なる記事を書いたとの事実」については真実であると認める、極めて不当な判決であった。弁護団は直ちにこれに控訴した。

発見
 ところで、控訴審段階にはいって、記事が捏造ではない、新たな、そして決定的な証拠が発見された。金学順氏の「証言テープ」である。
 この証言テープは、1991年11月25日、植村氏が金学順氏に対する弁護団の聞き取りに立ち会った際、金学順氏の証言を録音したテープである。植村氏が執筆した同年12月25日付け記事の冒頭には「その証言テープを再現する」とあるが、そこにいう「証言テープ」が今回発見されたテープである。
 「証言テープ」には「妓生に身売りされた」という証言がない。すなわち、記事に「金学順氏は妓生に身売りされた」との記載がないのは、金学順氏がそのように証言しなかったためなのである。一般社会通念から考えて、取材相手が話さなかった事実を記事に記載しなかったからといって、「捏造」(ないことをあるかのように偽って作ること)といえるはずがない。今回発見された新証拠が明らかにしたとおり、植村氏は事実を「捏造」して記事を書いた事実はなく、植村氏が「金学順のキーセンに身売りされたとの経歴を認識しながらあえて記事に記載しなかった」とか、「義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたとの事実」とかいうのは、いかなる意味においても事実に反している。

立証
 弁護団は、上記「証言テープ」とともに、そもそも「妓生=売春婦」「売春婦=従軍慰安婦」等ということは歴史的事実に反し、したがって、仮に植村氏が妓生について記事に書かなかったとしても全く問題がないこと等を詳細に立証する予定である。
 控訴審の裁判官が、これらの新証拠と主張に真摯に受け止め、事実と誠実に向き合うことが求められている。

神原元(かんばらはじめ)弁護士

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年10月25日号
posted by JCJ at 18:05 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする