2019年12月19日

【おすすめ本】安田純平+危険地報道を考えるジャーナリストの会『自己検証・危険地報道』─「危険な取材」が担う役割と教訓=鵜塚健(毎日新聞)

 2014年4月、シリアで拘束されていた4人のフランス人ジャーナリストを空港で出迎えたのは、当時のオランド大統領だった。だが日本では必ず「自己責任論」が出て、政府がジャーナリストに旅券返納を命じるなど介入の動きが目立つ。
「危険を冒さないと得られないような情報はいらない」「外国メディアの情報で十分」との声も少なくないのが現実だ。

フリージャーナリスト・安田純平さんが3年4カ月、シリアで武装勢力に拘束後、解放されて1年が経過。本書で安田さんが自身の取材の歩みを詳細に報告。また中東や北朝鮮、アフリカなどの現場で取材するフリーや元新聞記者で作る「危険地報道を考えるジャーナリストの会」のメンバーが、今回の拘束事案での課題と今後の教訓を徹底的に討議。

 熱量の高い議論の裏には、遠い国の現実を伝える重要性、ジャーナリストの役割が軽視される危機感と苦悩がある。
 2015年にシリアでフリーの後藤健二さんと知人の湯川遙菜さんが殺害された直後、世論調査の内閣支持率は上昇した。2004年にイラクで旅行者の香田証生さんが拘束、殺害された際にも、政府の姿勢を巡っての議論は起きなかった。
 会のメンバー、綿井健陽氏は「彼らを処刑した実行犯は過激派組織だが、それを容認したのは誰だったか」と命題を投げかける。危険地報道というテーマを通じて問うているのは、政府やメディアのあり方だけでなく、社会を構成する私たち一人一人の意識だ。(集英社新書860円)
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posted by JCJ at 09:51 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする