2019年12月30日

【出版部会例会】アマゾン「ひとでなし」企業だ 秘密主義、労働者酷使、税金逃れ 潜入ルポ・横田増生さん講演=土居秀夫

 出版部会では、あらゆる分野の支配を狙うアマゾンの実像を知ろうと、流通現場への潜入ルポを執筆・刊行した横田増生さんを講師に招き、「『amazon帝国』の現場を撃つ―いま何が起きているか」と題した講演会を11月22日、都内で開いた。

5人死んでいる
 横田さんがアマゾンの小田原流通センターに作業員として再度の潜入を果たしたのは2017年。02年の潜入時と比べ、東京ドーム4つ分というセンターの巨大化と、かつては本が中心だった商品の多様化に驚かされたが、何よりも労働者管理の徹底が凄まじかった。
 商品を棚から抜き取るピッキング作業にもハンディスキャナーが使われるようになって、各人の作業効率が記録・公表され、労働者を追い立てる。しかしいまだに手作業が中心で、自ら計測した横田さんは、センター内を一日20qも歩いたという。
 小田原センターでは13年以降、5人が死亡している。人が倒れても、現場から119番通報ができない。アルバイト作業員から上の社員まで情報が伝わるのに時間がかかって、手遅れになるのだ。秘密主義のアマゾンは、労働者の死亡について一切語らない。横田さんは自身の潜入経験から、ユニクロは「ろくでなし」だが、アマゾンは「ひとでなし」だと言い切った。

世界3位の市場
 イギリスでは11年、議会でアマゾン問題の公聴会が開かれた。以来、サンデーミラー紙やBBCなどが毎年のように潜入取材を行っているが、日本では自ら取材するマスメディアはない。今やあらゆる商品を扱うアマゾンにとって、日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界3位の市場だが、政治家も含めてものを言う人が少ないのはおかしい、と横田さんは訴えた。
 アマゾンの最大の問題のひとつが租税回避(タックスヘイブン)だ。創業者のジェフ・ベゾス氏は、創業前、アメリカ先住民居住地に本社を置いて税逃れを企てるなど、その手法は一貫している。いくつもの州では売上税をめぐる裁判を起こされ、アマゾンは敗訴した。とはいえ、アマゾンジャパンが日本で払った法人税は14年の10億円のみ。書籍だけでも2000億円近い売り上げがあるので、限りなく違法に近い状態だ。

狙われる出版界
 アマゾンは送料無料のプライム会員制、学生割引などで書籍の再販売価格維持制度を無視している。それだけでなく、中小出版社に対し、好条件の直接取引を持ちかけるが、最終的には本来書店の取り分であった価格の22%を40%にするなど、アマゾンが最も利益を得ることになる。これに反旗を翻すどころか、出版社の多くはアマゾンに対して口をつぐんでいると、横田さんは指摘した。
 講演の終わりに、ドイツのアマゾンで労働組合が結成され、ライプチヒでは1500人中700人まで組織したこと、組合員の増加に伴い時給が上がったことを紹介。労働者軽視を止めさせるには労働組合が必要だと、横田さんは強調した。そして、大手メディアがアマゾンの租税回避や労働の実態をもっと取り上げるべきだし、政官の監視と指導が欠かせないと締めくくった。
 講演後の質疑では、アマゾンの消費税の支払い方への疑問やフェイクレビュー、売り上げの半分以上を占めるマーケットプレイスの問題などが取り上げられ、充実した議論になった。 

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 13:05 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする