2019年12月31日

核兵器使用は犯罪 非武装こそ真の平和 ローマ教皇 被爆地・広島で訴え=沢田正

 ローマ教皇(法王)フランシスコ(82)は11月23日から25日にかけて初来日し、被爆地の長崎と広島で演説。「戦争のため原子力使用は犯罪。核兵器保有自体が倫理に反する」と断罪し、カトリック教会は「核兵器禁止条約を含め核軍縮と不拡散に関する国際的な法的原則に則り行動する」との決意を表明した。
 世界で13億人の信者を擁するカトリック教会の長である教皇の被爆地訪問は38年ぶり2回目。24日午前に訪れた長崎では爆心地公園で演説し、「武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、日ごと武器はいっそう破壊的になっている。これらはテロ行為」と厳しく批判。世界の政治指導者に「核兵器は国家の安全保障への脅威に関して守ってくれるものではない。人道および環境の観点から核兵器使用の壊滅的な破壊を考え、核の理論による恐れ、不信、敵意の増幅を止めなければならない」と呼びかけた。

切り開く3つの力
 次いで夜に広島入りし、平和記念公園で被爆者やさまざまな宗教の代表者ら2000人が参加する「平和のための集い」に臨み、被爆者二人の証言を聞いたあとにスピーチ。「この場所のすべての犠牲者を記憶にとどめる。また生き延びた方々の強さと誇りに深く敬意を表する」と述べ、「思い出し、ともに歩み、守ること、この三つは、平和となる道を切り開く力があり、現在と将来の世代がここでおきたことを忘れてはならない」と被爆地の記憶の普遍性を指摘。また「紛争の解決策として核戦争の脅威による威嚇をちらつかせながらどうして平和を提案できるだろうか。真の平和とは非武装の平和以外にありえない」と世界に訴えた。
 バチカン(教皇庁)は東西冷戦時代、抑止力として核兵器を容認していたが、2013年就任の教皇は核抑止を否定。バチカン市国は17年7月に国連で採択された核兵器禁止条約を同9月に批准した。条約は50カ国が批准した90日後に発効する。全核保有国が条約に後ろ向きだが、教皇が滞日中にアンティグア・バーブーダが34番目の批准国となり、発効への流れはもはやとどめ難い。
 ストックホルム国際平和研究所によると、今年1月時点で世界の核弾頭数は9カ国計約1万3865個、前年より600個減ったものの世界を何回も破滅させる量だ。米ロが全体の約9割を保有するが、トランプ米政権は中距離核戦力(INF)全廃条約から一方的に離脱し、同条約は今年8月に失効。INFと並び核軍縮の要となってきた新戦略兵器削減条約(新START)も21年の期限切れ後の先行きは不透明だ。その一方で、両国とも新たな核巡航ミサイルの開発に乗り出すなど核軍拡に転じている。
 また米国の「核の傘」に依存、追随する日本政府は禁止条約に反対し、批准しないと公言している。

被爆者をよく理解
 今年3月末時点の被爆者健康手帳保持者の平均年齢は82・65歳。被爆者や被爆地の市民が、核なき世界の実現へ向けて教皇の発信力へ期待するものは大きい。
 教皇と握手した広島県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は「広島のメッセージを世界に呼びかけてくださいと伝えた。生きて記憶を語り、核兵器をなくしていこうと言っている、被爆者のことをよく理解されている。原子力を戦争に使うのは犯罪といわれたことはうれしい」と語る。
 生後9カ月で爆心から3`の自宅で被爆、母に背負われて避難場所に向かう途中で黒い雨も浴びた。被爆者の相談活動に携わるが、今でも「被爆者手帳を取得したい」「原爆症の認定を受けたい」という相談を受けるという。「原爆は昔のことではなく今のこと。核兵器をなくすのは、今のわれわれ自身の問題ということを市民社会に訴えるのに教皇のメッセージは大きな意味がある」と、教皇の被爆地訪問を高く評価した。

沢田正(広島支部)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
posted by JCJ at 10:57 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする