2020年01月27日

韓国メディアに広がるファクトチェック 17年大統領選がきっかけ ソウル大研究者と労組幹部が報告=橋詰雅博

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 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と韓国の全国言論労働組合(言論労組)が14年ぶりに交流を復活させて、共同でファクトチェックができないかの検討を始めると本紙12月号で報じた。その言論労組首席副委員長のソン・ヒョンジュンさんと、国立ソウル大(SNU)ファクトチェックセンター所長のチョン・ウンリョンさんが日本のファクト・イニシアティブの招きで来日し、1月11日に早稲田大学で講演した。
ソンさんは公共放送のKBS、チョンさんは東亜日報、どちらも記者出身だ。日本の先を行く韓国メディアの活発なファクトチェックを二人が語った。
27メディアが加盟
 SNUファクトチェックセンターの概要をチョンさんは、こう説明した。現在、新聞やテレビ、ネットの27メディアが加盟する同センターの設立のきっかけは、現大統領の文在寅らが出馬した2017年の大統領選だった。国内世論の後押しもあって各候補者の発言や主張が正しいかそうでないかのチェックが必要ということで、政治的中立性を保てる大学内に発足した。この17年が韓国ファクトチェックの元年と位置づけられている。3月下旬から5月初旬にかけて各メディアが検証を行った約180件のうち、半数が誤りと判定された。同センターは各社から提供される検証記事を集約するプラットフォームの役割を果たしている。運営費は韓国を代表するポータルサイト「ネイバー(NAVER)」が提供。ネイバー上で流されたニュースの広告収入の30%をセンターが受け取っている。今年が3年契約の最終年で、契約更新の有無はまだ決まっていない。
JTBCが先駆け
ソンさんは韓国放送界を中心にファクトチェックの現状を報告した。
 放送や新聞などでファクトチェックが広がった大きな理由は、2つある。14年のセウォル号事件で事実と異なる報道により主要メディアの信頼が地に落ちたためメディア間で挽回の機運が高まったのが一つの理由。もう一つは中央日報系の新興テレビ局JTBCが14年から設けたファクトチェックコーナーが人気を呼んだことだ。こうしたことで、KBSやMBC、SBSなどの各局がファクトチェックコーナーを次々に設けた。朝鮮日報、韓国日報、中央日報、韓国経済といった新聞や連合ニュースなどの通信社、ノーカットニュースなどのネットメディアもファクトチェックに乗り出した。
 ソンさんの出身メディアKBSは、放送で流したニュース記事、ホームページに掲載した記事、ユーチューブに上げた動画をそれぞれファクトチェックしている。
 にもかかわらず国民のメディアへの信頼はまだ回復していない。デジタルニュースレポートによれば、国別ランキングでは17年は36カ国中36位、18年が37国中37位、19年は38国中38位と3年連続で最下位だ。ファクトチェックは政治的に利用されるリスクを伴うが、国民の信頼を得るには「ファクトチェックジャーナリズムは韓国メディアにとって最低限の仕事」と認識されている。
 メディアに対する評価のレベルが高くなっている国民と共にファクトチェックを軸とした「メディア改革」の世論形成とその拡大がこれからの課題だと指摘した。
 日韓による共同ファクトチェック作業については「議論がまだ深まっていない」そうだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年1月25日号
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posted by JCJ at 11:11 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする