2020年02月24日

【映画の鏡】名作の舞台 今や犯罪地帯に化す「レ・ミゼラブル」移民少年と警察との衝突が思わぬ方向へ=今井潤

 この作品は冒頭から最後まで息をつく間もない緊張の連続する104分の問題作だ。去年のカンヌ映画祭で、韓国の「パラサイト」と最高賞パルムドールを競い、コンペ最大のショックと称賛を受けたのだ。
 ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台ともなったパリ郊外の団地は60年代にミドルクラス向けの住宅として建設された。しかし、高速道路が中止となり、陸の孤島の住宅は貧困化が進み、90年代以降は警察と若者の衝突が相次ぐようになった。今や移民や低所得者層が多く住む危険な犯罪地域と化している。
 団地の治安を取り締まるメンバーに配属されたのは北フランスから来たステファンだ。白人のリーダーは人種差別主義者、もうひとりの黒人警察官の3人でパトロールすることになった。
 ある日イッサという少年がロマのサーカス団からライオンの子どもを盗んだことが原因で、街のギャング同士が一触即発の騒動に発展してしまう。
 治安警察と少年グループはもみ合いになり、黒人警察官がイッサに発砲し、さらに追跡していくが、その一部始終が何者かのドローンで撮影されてしまう。混沌とした事態を収束したい治安警察だが、少年グループをめぐる騒動は思わぬ方向に進んでいく。
 それにしても、この作品に出てくる街のギャングの面構えはハリウッドの映画の役者を超え、グルジアかセルビアの役者の風貌を思い起させた。
(公開は2月28日(金)新宿武蔵野館、渋谷ルシネマほか)   
今井 潤


posted by JCJ at 10:49 | 現代アート・映画・演劇・音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする