2020年03月02日

【中・香・台の最新社会情勢】 中国「一国二制度」見直す? 香港の若者 独立見据え持久戦 政治の片寄り「危険」とブレーキきかす台湾人=和仁廉夫

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 「台湾・香港どうなる、中国どう出る」という論題について少し頭を抱えてしまった。
結論から言えば、従来から台湾が与野党とも「一国二制度」を拒絶してきたことに変わりはないし、膠着している香港情勢も、中国が人民解放軍を投入してまで自ら作った「一国二制度」を壊すことはあり得ない。

旧世代政党きえた
 台湾の場合、香港情勢が蔡英文総統再選の追い風になったのは事実だが、同日行われた立法委員選挙では与党民進党が議席を減らし、野党国民党が議席を伸ばした。私が注目したのは、宋楚瑜が率いる親民党が全ての議席を失ったことだ。4年前の立法委員選挙では李登輝を精神的領袖と仰ぐ台湾団結連盟が議席を失っており、統一・独立の旗幟が鮮明な旧世代の政党が相次いで姿を消したことになる。
 今世紀の台湾は、民進党の陳水扁、国民党の馬英九と、8年刻みで政権交代があった。半世紀以上にわたり中国と対峙してきた台湾人は、政権が統一・独立の何れに傾き過ぎても、危険を察知してブレーキを働かせる成熟を見せている。
 一方、香港情勢はもっと根が深い。
香港は1984年の「中英協定」で97年に英植民地から中国に返還された。すでに香港には人民解放軍が駐留し、中国全人代が定めた「香港基本法」のもと、社会主義中国における資本主義香港の「高度な自治」が行われている。
 今世紀初め、中国は「自由行」で中国人の香港渡航を緩和し、中国経済の発展に香港を組み込む政策に転じた。将来は珠江三角州だけで日本のGDPを抜くという「粤港澳大灣区」構想もある。鉄道や道路、橋梁が次々と完成し、中国富裕層の不動産買い占めで家賃は高騰。市街地は宝石店、薬局など中国人本位に塗り替えられ、香港庶民の生活空間を奪った。
 ウソごまかしのない普通選挙を目指した2014年「雨傘運動」の敗北後、香港の若者たちは次々と「本土派」グループを立ち上げた。「民主派」が中国と香港の民主化を要求し普通選挙を目標に置くのに対し、「本土派」は「一国二制度」からの離脱、中国との決別を主張する。その究極が、香港独立である。
 そもそも昨年6月9日の100万人デモや、翌週16日の200万人デモを主催した「民間人権陣線」は「民主派」の糾合組織だが、SNSで呼びかけられて香港各地に拡散した大小のデモは、実態は「本土派のものだ。両者は相乗りしており、今のところ団結している。

闘い絶対やめない
 「雨傘運動」以後、「本土派」は、16年の旺角暴動で大量の逮捕者を出したうえ、同年秋の立法会選挙で「民主派」との中間に位置する「民主自決派」も含めて6人の当選者を出しながら、就任宣誓で中国を侮辱したため次々と議席を剥奪された。香港独立を主張する「香港民族党」も結社禁止となった。香港の若者たちは治安維持法下の共産党のような、非合法下の境遇に追い込まれていたといってよい。
 昨年、逃亡犯条例問題で広範な反対世論が噴きだしたとき、「本土派」の若者たちは覆面で顔を覆い街頭に出てきた。彼らは個人が特定されにくいテレグラムなどのSNSで呼びかけ、各地で「網民デモ」を組織した。「本土派」の思いを行動に移したのが「勇武」である。  
 彼らは凶暴化した警察に対抗して、立法会包囲・突入、道路封鎖、鉄道駅破壊、中国ビジネスで利益をあげる銀行・ショッピングセンターなどを破壊した。これまでに7000人以上が逮捕され、16%余りが起訴された。
 若者たちは「一国二制度」の区切りとなる2047年を射程にしており、闘いを止めれば弾圧されるから、不退転の覚悟で持久戦を展開している。
 「雨傘運動」以後、市民警察から治安警察に変貌した警察と、「勇武」のイタチごっこで、香港社会はデモ支持の「黄色店舗」と政府支持の「青色店舗」に色分けされ、市民社会は分断された。
 憂慮すべき事態だが、「民主派」は今年秋の立法会選挙、2021年の行政長官選挙で「本土派」の支持を必要としており、彼らへの批判を自制している。
 だが、中国が直ちに香港政策の見直しに動くことはないだろう。もし香港・台湾政策の調整が行われるとすれば、香港・マカオの「一国二制度」が折り返し点を迎える2022〜2024年の時期ではないか。
和仁廉夫(ジャーナリスト、写真も)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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posted by JCJ at 13:59 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする