2020年03月07日

【月刊マスコミ評・放送】 新社屋建設の次はヒトへの投資を=岩崎貞明

 ローカルテレビ局で、このところ盛んに新社屋の建設が続いている。
 地上波放送のデジタル化が完了したのは2012年3月だが、早いところでは2006年ごろには撮影機材やスタジオ設備などのデジタル化を進めていた局もあったから、そろそろ15年を経て、また機材の更新時期を迎える、という事情がある。
 また一方で、CM広告収入が今年度の下半期から目に見えて減少傾向となり、スポットCMのセールスが前年比90%を割り込む局・地域も出始めた。大規模な設備投資をするなら今のうちだ、という経営判断もあるだろう。
 かつて某ローカル局の社長経験者は「放送局の社長がやるべきもっとも重要な仕事は、機材の更新時期を見極めること。ほぼこれに尽きる」と語っていた。
 日本テレビ系の広島テレビ(広島市)は、繁華街の近くにあった本社から、JR広島駅新幹線口の前の再開発事業に参画して、ホールも備えた立派な新局舎に移転した。しかし広島駅の北側はまだまだ人通りの少ない地域で、この移転が吉と出るか凶と出るか。
 フジテレビ系の福島テレビ(福島市)は、以前の社屋の隣に、サイズを小さくした新社屋を建てた。一人当たりの専有面積も小さくなったということだが、「身の丈に合わせた局舎にした」ということだ。
 同じフジ系の沖縄テレビ(那覇市)は、バスターミナル近くに新社屋用の土地を確保していたが、空港の進入路にあたって高さ制限にひっかかり、新社屋の計画が白紙になったという笑えない話もある。
 TBS系では東北放送(仙台市)や南日本放送(鹿児島市)など老舗の局がいよいよ新社屋建設計画の最中で、長崎放送(長崎市)も駅前再開発に乗って新局舎に移転する予定だという。
 その長崎放送では、経営の先行き不透明感から、中高年層の大幅な賃金ダウンを含む新人事制度を労組に提案して、労使紛争の種となっている。昨年の年末一時金も超低額回答だったことから労組が無期限ストに突入し、社長が組合員との対話に臨んでようやく収拾した経緯もあった。
 カネのあるうちにハコモノ投資を、という経営の考え方もわかるが、放送局の最大の資産は番組制作などに携わる働き手にあるはずだ。人的資産の価値向上に向けて、この春闘では改めて「ヒトへの投資」に期待したい。
 岩崎貞明
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

posted by JCJ at 14:53 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする