1月29日、30日の両日、横浜市みなとみらい地区にある展示場パシフィコ横浜で「統合型リゾート産業展」が開かれた。29日の開会前には、会場へ向かう連絡通路で、横浜市の統合型リゾート(IR)誘致に反対する「カジノ誘致反対横浜連絡会」のメンバーが、産業展入場者に向かいカジノ反対をアピールした。
「カジノの収益の源泉は客の負債。横浜市は市の財政への寄与を期待しているが、ギャンブルで自己破産し生活保護受給者が増えれば、財政にも悪影響」「IRは施設内に客を囲い込むから、周辺の観光地にカネが落ちるわけではない」「安倍首相はカジノが成長産業だと言っているが、世界的にはカジノ産業は伸びていない」などと訴えた。
この抗議活動をスマホで撮影する入場者と思われる人もいた。テレビ局も数社、反対派のインタビューを取材していた。
海外事業者目立つ
会場でひときわ目立ったのは、ラスベガスサンズ、メルコリゾーツなど海外のIR事業者のブースだ。サンズなどのブースにはステージで派手なショーが行われていた。
エンターテインメント性を売り込んでいる一方でスロットマシンなどギャンブルに関する展示は全くない。IR担当副大臣だった秋元司衆議院議員が収賄罪で逮捕・起訴されてカジノは大きくイメージダウン。このためカジノ隠し≠ノ躍起と感じた。
大手ゼネコンはIRとは直接関係ない直近の事業事例をパネルで紹介していたが、IR施設建設が狙い。
大手家電メーカーの担当者にIRと展示の関わりを質問すると、パネルの半分を示して「向こう側の展示は、直接関係はないですよ」と笑う。最新技術を示してなんとかビジネスチャンスを得ようというわけだ。
会場には昨年12月発行の横浜市の広報紙の特別号が積まれていた。IRについて「子どもから大人まで誰もが訪れ、楽しむことのできる施設と、これを収益面で支えるカジノ施設を一体的につくり、(民間業者が)運営するもの」とPR。
韓国は地域が荒廃
経済波及効果や市の増収効果などについて具体的な数値を挙げているが、よく見るとその横に「効果(数値)については事業者から提供された情報です」とただし書きがつく。業者の言い分をそのまま載せている。市が十分な調査・研究をした上でカジノを誘致したのではないことが明らかだ。
カジノ誘致反対横浜連絡協議会の後藤仁敏共同代表はこう市の姿勢を批判する。
「私も展示会を見ましたが、賭けごとにかこつけて商売しようとしていることに腹が立ちました。大阪で明らかにされた事業者の募集要項によると、カジノ運営企業に利益が出なかった場合、自治体が補償すると決められている。横浜市に文書開示を請求したところ、文書は黒塗りだった。
韓国の江原にあるカジノは唯一自国民が入場できるが、ギャンブル依存症が増加し、地域が荒廃してしまった。観光地として魅力ある横浜が、カジノに手を出すべきではない」
保坂義久
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号