2020年03月12日

自衛隊の中東派遣 新型肺炎の国内感染 危機の悪乗り 改憲ねらう=丸山重威

 「私の手で改憲を」と宣言した安倍晋三首相は「危機」にまともな対応をしないまま「改憲ムード」の醸成に利用する政治手法に本格的に乗り出したように見える。中東への自衛艦派遣や新型コロナウイルス国内感染への対応、数々の疑惑への検察人事はそれで、メディアの鋭い批判が求められる。
 2月2日、中東に派遣される海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が横須賀基地を出発した。国会にも諮らない閣議決定で、有志連合に「情報活動」で「貢献」するため「調査・研究」の名目での派遣。攻撃を受ければ海上警備行動の発動もあるとし、戦争に巻き込まれる危険な派遣だが、メディアの対応は割れている。
 つまり朝日は「政府はいったん立ち止まり派遣の是非から検討し直すべきだ」(1月10日)と主張したのに対し、読売は「緻密な計画で万全の体制を」「さまざまな状況を想定し訓練を重ねることが大切」(12月28日)とし、「襲撃」には「応戦」も想定した。河野太郎防衛相は1月17日「自衛隊が何らかの武力紛争に巻き込まれる危険があるとは考えていない」と述べたが、「何かあったら……」の不安は解消されていない。
救出イメージ先行
 「何かあったら…」以上に危機を煽って問題を拡大しているのが新型コロナウイルスの感染だ。
 ここで政府がいち早く打ち出したのが、特別機の派遣。首相は「帰国支援は考えていない」(1月24日)としていた外務省を押し切って26日特別機派遣を決めた。
 戦争法で強調した紛争地から母子を連れ帰る絵の実践だ。しかし、連れ帰ってからの検診、入院、隔離政策など、具体的な対策は全くないままで、検診も少数しかできず、宿泊ホテルは他人と同部屋、飛行機代を徴収しようとして問題になった。
 さらに横浜に帰ってきたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対策はすべて後手後手に回り、3000人以上が長期間不自由な船室内に閉じ込められる結果になり、かえって被害を拡大。船内の感染者は13日までで218人に達した。
 この状況を「改憲」に利用したのは伊吹文明元衆院議長。30日二階派の会合で「緊急事態に個人の権利をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台」と発言、下村博文選対本部長も1日「改憲議論のきっかけに」とした。28日の衆院予算委では馬場伸幸維新幹事長の質問に安倍首相も「与野党の枠を越えた活発な議論を」と答弁した。
 野党は「人命に関わる問題の悪用だ」(枝野幸男立憲民主党代表)などと批判、沖縄タイムス(2日)東京新聞(8日)などが社説で批判したが、産経は「首相には非常大権がない」ことをあげて「憲法改正は待ったなし」などと論じた(1日)。
疑惑もみ消し人事
  国会でも,ほとんどまともに答えない安倍首相は、法律に違反して検察庁人事に介入。1月31日、2月7日定年退官の予定だった黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を閣議決定した。
 稲田伸夫現検事総長の後任に黒川氏を起用するための人事とされ、現在捜査中のIR疑獄、「桜を見る会」の政治資金規正法事件、河井前法相夫妻の公選法違反など、追い込まれた安倍政権の事実上の「指揮権発動」宣言とも見られている。
 首相は年頭所感や年頭記者会見、NHK日曜討論など(既報)に続き20日の通常国会施政方針演説では「(改憲の)案を示すのは国会議員の責任ではないか。憲法審査会でその責任を果たしていこう」と演説。27日の衆院予算委でも「(日本防衛の)中核たる自衛隊をしっかり憲法に明記し、その正当性を確定することこそ安全保障、防衛の根幹」と述べ、異常な執念を見せている。
 丸山重威
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号

posted by JCJ at 15:19 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする