
JCJ関西と在阪メディア関連の4団体で構成する「メディアを考える会・大阪」が、昨年11月に催した講演会「維新政治とメディアの劣化」を紹介したい。
講師を森裕之・立命館大学教授に依頼した。森氏は地方自治が専門で、大阪維新には批判的な立場にある。
真実なんかどうでもいいという時代になっている、トランプ氏や安倍さんが頭に浮かぶだろうが、彼らが出てくるずっと前にこの大阪から始まった。それは維新政治であり、橋下徹という人物だ。維新が喧伝する「有効求人倍率が改善」「T R(カジノ)誘致」「大阪の成長を止めるな」そして再び持ち出した「大阪都構想」について統計と数字に基づいて検証し、次のように述べた。
「求人倍率の改善」は、比較する相手が北海道や秋田、長崎など大阪より悪いところで、東京、愛知など大都市域とは比べていない。カジノについては、年間入場者数を当初2480万人と見込み大阪経済を大いに潤すような宣伝をしたが、今は1500万に減らした。
USJ・ユニバーサルスタジオジャパンの過去最高の入場者数が1460万人、これを大きく上回る人が来る訳がない。
「大阪の成長」=GDPは2001年を100とした場合、以後ずっとマイナスでようやく2014年に101・6になったが、国のそれは112で、いわば大阪が足を引っ張っているのであり成長はしていない。しかし、これら維新の詐欺的宣伝についてメディアは何の検証もせずに垂れ流す。
都構想をめぐる前回住民投票の時に、橋下ブレーンの上山信一氏と読売新聞紙上で討論したが、記者はこれを「両論併記」だと言う、真実に立った上で推論すれば依って立つ観点の違いで結論が違う、これが両論あり、デマと真実を両論とすればデマが横行する。
真実というのは、考えないといけない苦しさがある。「感情に訴える」方が楽だから真実は負けがちになる。
森氏は「アホな両論併記でなく、正しい情報をきちんと流していくそういうメディアに蘇生してほしい」と締めくくった。
井上喜雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号