最近、新聞を読んでいて「なぜそれ以上追及しないのか」と疑問を持つ記事が多すぎる。古い順に、気付いたままに3点を列挙すると―。
まず、衆議院予算委員会(2月17日)。立憲民主党の辻元清美さんは「首相主催の桜を見る会」の「前夜祭疑惑」について会場となった全日空インターコンチネンタルホテル東京に「経費の見積もりや請求書を主催者側に発行しないケースがあったか」と質問して得たホテル側の「ございません」という回答を明らかにした。
翌18日の朝刊各紙は、このやり取りを報道したが、辻元さんが質問する前に、「なぜ」新聞社が独自でホテル側に取材しなかったのか。していたのに返事がなかったのか。辻元さんに抜かれた形で安倍首相側とホテル側との矛盾を記事にしたのは解せない。
次に3月6日。安倍首相は、新型コロナウイルス問題に絡み、中国と韓国から日本への入国の制限を打ち出した。翌7日の各紙は、習近平・中国国家主席の国賓としての来日が延期されたことも報じた。
各紙の記事では、習氏来日延期で、中国人の入国規制も強めたのではという観点では述べていたが、「なぜ」韓国に対する規制も強化されたのか、またイタリアからの入国は規制されないのかは不問だった。
さらに、れいわ新選組の舩後靖参議院議員が3月11日、新型コロナウイルス問題で、生命の危機を理由に委員会を欠席すると事務局に届けた件だ。日本維新の会の音喜多駿議員がツイッターで「(欠席した)その分の歳費は返納されないと国民の納得を得るのは厳しい気も」と述べたと報じられた。
新聞は「事実」だけを取り上げていたが、では昨年の参議院選挙で当選した河井案理議員と法相を引責辞任した夫の河井克行衆議院議員、それに経産相を引責辞任した菅原一秀衆議院議員が昨年の臨時国会に姿を見せず多額の給料、賞与をもらい釈明もしなかった点について音喜多議員は触れていないにもかかわらず新聞は、その「なぜ」を音喜多議員に取材した様子もない。
こうした「なぜ追及不十分の記事」が目立つ新聞各紙の取材記者が、それこそ「なぜ」疑問を抱かないのか、あるいは取材していたとしても「なぜ」書かないのか、首をひねるばかりだ。
白垣詔男
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号