2020年04月11日

望月記者大いに語る 小森陽一対談チャンネル 読者と社の支援で圧力はね返す 権力とメディアの闘いに=河野慎二

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 東京新聞の望月衣塑子記者をゲストに迎えてFmAが収録した「小森陽一対談チャンネル」が2日、ユーチューブを通じて全国に発信された。
 望月記者は「桜を見る会」問題で「昨年11月以降、菅義偉官房長官が番記者から突っ込まれ、追い込まれている」「今は少し空気が変わってきている」と指摘した。
 しかし、望月記者が菅会見に出席した2017年6月当時は、番記者の追及は弱く「しがらみのない自分が純粋に感じていることを聞いてみようと考えた。20分間で23の質問をした時もある」。
尋常ではなかった
 安倍官邸の圧力は尋常ではなかった。「安倍首相秘書官の今井尚哉氏が望月は何とかならんのかと発言したと聞いた」。
 一方で、望月会見の動画がネットでアップされると「自分が聴きたいことを、普通に聞く記者がようやく出て来た」などのアクセスが相次ぎ、東京新聞には「望月記者を官邸に行かせないことは、止めてほしい」などの電話やメールが殺到した。
 望月記者が、強まる官邸の圧力を跳ね返し得たのは、読者の声と社のバックアップ態勢だ。
 編集局長は政治部長や社会部長に「自分たちを支えている読者の声は、『もっときっちり、疑問や疑惑を追及しろ』という声だ。望月が聞きたいと言う限り、望月を止めさせるのではなく、背中を押してやろう」と指示をしてくれた。
連帯の構図できる
 だが、官邸の質問妨害は常軌を逸したものとなる。「私の1分半の質問に、官邸の報道室長が7回も『質問は簡潔に!』とさえぎって来た」。挙句の果てに「望月質問には事実誤認がある」として内閣広報官が東京新聞に抗議文を送り付けた。
 東京は1ページ全面で反論記事を特集、全国の地方紙も共同通信配信の記事で東京新聞支援の論陣を張った。
 望月記者は「官邸が強くなる中で、記者クラブが弱い立場に追い込まれている。それを変えて行かないといけない」と強調。「官邸の抗議文書は自ら墓穴を掘ってしまった。
 あからさまな圧力にメディアはどうするのかがみんなの共通課題になり、東京新聞対官邸の問題ではなく、権力対メディアの問題になった。その中で、重要な連帯の構図がメディアの中で出来て行った」と振り返った。
心を揺さぶられた
 望月記者は、レイプ被害にあったジャーナリスト・伊藤詩織さんについて「詩織さんの告発に私は大きく心を揺さぶられた」と語った。
 伊藤さんは昨年末、民事訴訟で、性暴力被害者や支援者の後ろ盾になる勝訴判決を勝ち取った。望月記者は「詩織さんを見て、自分はただ記事を書いていればいいのか。もっと突っ込んで行かなければいけないんじゃないか。一人ひとりが感じている不誠実や不正義に鬱屈するのではなく、きっちり声を上げて抵抗しないといけないんだという思いにさせられた」と述べた。
 望月記者は昨秋、大学入試に英語民間試験導入を図ろうとした安倍政権の政策を「受験生や保護者、教師の力で、土壇場で政策変更に追い込んだ」ことを高く評価した。
 その上で「みんなが声を上げ、繋がることで、政治は私たち一人ひとりの手の中にあることを再認識できた。政治や社会がより良い方向に向かって行けるような一翼を、メディアや記者が担えれば、と思っている」と対談を締めくくった。
河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

posted by JCJ at 10:18 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする