
自民党は3月17日、コロナウイルスの流行で延期した党大会に代わる両院議員総会を開き、2020年運動方針を採択した。憲法について「国会発議に向けた環境を整えるべく力を尽くす」と明記。安倍晋三首相は「憲法改正を含めて運動方針に則り、一致結束して全力を尽くしたい」とあいさつした。
新型コロナウイルス感染拡大に対して政府、与党一体となった取り組みを要請したが、すでにこの「ショック」を利用した改憲戦略が出てきていることを見逃すわけにはいかない。
伊吹発言が発端
伊吹文明元衆院議長は1月30日、二階派の会合で「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と語り、2月1日には下村博文選対本部長も「改憲論議のきっかけに」と提起した。
また1月28日の衆院予算委では、日本維新の会の馬場伸幸幹事長が「このようなことがあったから緊急事態条項を新設しなければならない、と言う議論を活発にすれば国民の理解も深まるのではないか」と質問、安倍首相は「緊急事態条項を含め…与野党の枠を超えた活発な議論を期待する」と答えている。
女性や青年狙え
運動方針では、その冒頭に「新たな時代にふさわしい憲法へ」と題して改憲を掲げ、総合的な改憲運動を提起している。
具体的には、憲法改正推進本部が「遊説・組織委員会」を設置して全国で「憲法改正研修会」を「精力的に」開催するほか、組織運動本部が女性の視点からのパンフや若い世代に向けた漫画入り冊子を作成。青年組織の「全国一斉街頭行動」などを「積極的に」展開、「友好団体」にも説明の機会を設けるなど「世論喚起に励む」とする。
さらに「広報本部」は「憲法改正の主役はあなたです」というポスターの全国展開、インターネット動画の活用を通じて国民的な機運の盛り上げに努めるという。
ネット配信強化
運動方針で自民党は、昨年の参院選について「わが党は憲法改正について『議論を前に進めるべきか、否か』その選択の選挙であることを国民に訴えた。結果、『議論を前に進めよ』との国民の強い支持を得た」と主張。「早期に衆参の憲法審査会の場における各党各会派の枠を超えた議論は、実施されるべきである」との論理を展開、改憲論議の推進を狙っている。
もちろん参院選の結果から「『憲法論議を進めよ』が民意だ」などという結論は出てこない。
このほか、自民党運動方針は、「党勢の拡大は道半ば」と各選挙の必勝に向けた党員拡大と組織力の強化をうたい、「友好団体」の結びつきの強化、「友好的な労組」との政策懇談、政策アピールを進めることや、少人数での車座「ふるさと対話集会」、日本の近現代史を学ぶ「まなびと夜間塾」、「地方政治大学校」との連携を強める。
そして、講座のネット配信のほかホームページをリニューアルし、スマートフォンで見易さ、使いやすさを高め、閲覧者に合わせた「見える化」を図るという。
特にSNSや動画放送局「カフェ・スタ」で一層面白い発信をする、など、ネット社会での広報強化をうたっている。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号