
元従軍慰安婦の女性が韓国で初めて名乗り出た1991年の2本の記事で、不当な「捏造記者」攻撃に晒された元朝日新聞記者植村隆さんの名誉回復の闘いは、今年2月(札幌)、3月(東京)の両控訴審での高裁不当判決を受け、新たなステージで闘いが再スタートした。
札幌(被告櫻井よしこら)、東京(被告西岡力ら)両控訴審判決の真実相当性認定の不当は、機関紙ジャーナリスト紙面や両判決に対するJCJの声明で明らかにした通りだ。
両高裁は、櫻井、西岡両氏を「免責」するため、一審で明らかになった櫻井、西岡両氏こそが「捏造者」だった事実に目をつぶり、控訴審では新証拠(1991年11月の弁護団聴き取り調査への金学順さんの「証言テープ」)の内容をも否定。
植村さんが「金学順さんの記事を、読者に事実を伝えるために書いたのか、読者を騙すために事実を偽り「捏造」したのか」への判断が問われているにもかかわらず、(櫻井、西岡が)「真実でなくても、そう思い込んだことに相当の事情がある」と「真実相当性」に逃げ込み、植村「捏造記者バッシング」を免罪した。
この控訴審両判決は、最高裁の判例にも、国の「強制連行」や「慰安婦」の定義にも背反する。根本にあるのは「朝日新聞の慰安婦報道が間違っていたのだから、記事を『捏造』呼ばわりされても仕方がない」との認識だ。
つまり記事が真実かどうかなど関係ない、「歴史否認」勢力への忖度判決だったのだ。それは植村裁判を支える市民の会ブログや『慰安婦報道「捏造」の真実』(花伝社)に詳しい。
植村訴訟の舞台は最高裁に移る。そして名誉回復の闘いの主戦場は「言論の場」にも広がる。
編集部
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号