2020年04月19日

【今週の風考計】4.19─トランプ大統領! WHOを危機に陥れるな

WHO(世界保健機関)が危機にさらされている。1948年4月7日に設立されたWHOは、2年後、その日を記念して「世界保健デー」とし、今年は70年を迎える。
 しかも新型コロナウイルスが世界中を暴れまわり、感染者220万人・死者15万人となる今、こともあろうに米国のトランプ大統領は、WHOへの資金拠出を一時停止すると表明した。
トランプ大統領は自らのコロナ対応への失敗を糊塗するため、「中国寄りのWHOが多くの過ちを犯し、多くの人が死亡した」などと、責任転嫁の言動を繰り返している。
 WHOへの協力では、民間からの任意拠出金の額が最大のビル・ゲイツ氏が、「世界的な医療危機のさなか、WHOへの資金拠出を停止するのは危険だ」と批判し、「新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかける上で、ますますWHOを必要としている」と、WHOの重要性を指摘している。

WHOの財政は2年期制で分担金と任意拠出金で構成する。全体で約4900億円。分担金は各国の富裕度や人口によって算出され拠出する。分担金の割合は2020年会計で、1位の米国22%、次いで中国12%、3位が日本8.5%となっている。とりわけ中国はWHO分担金の伸び率が断トツで二桁を更新し、日本を抜いて2位の座を固めている。
トランプ大統領は、米中の経済衝突から、報復関税へとエスカレートし、いまだに中国といがみ合う。もちろん最初にコロナの集団感染が確認された中国の初動の遅れ、またWHOへの圧力など、改めて責任が問われてしかるべきだと思う。
 だが自国のコロナ猛威への対処に失敗し、11月の大統領選を視野に支持率低下に悩むあげく、責任をWHOへなすりつけ、「資金拠出の停止」という脅しを仕掛けるのは筋違いも甚だしい。

いまWHOは懸命だ。アフリカ諸国や難民キャンプ、貧困地域など、保健衛生が不十分で医療施設・従事者が貧弱な地域へのコロナ感染拡大は、想像以上の悲劇を招く。新型コロナウイルスの感染を阻止するかたわら、はしかや風疹、肺炎、ポリオ、ジフテリア、破傷風などの蔓延も防がねばならない。
これらの病気はワクチン接種で防ぐことができる。だが実情は、2千万に及ぶ1歳未満の子どもたちが、ワクチン接種を受けていない。WHO は24日から30日の一週間を「世界予防接種週間」とし、ワクチン接種キャンペーンを展開する。
 また25日は特別に「世界マラリアデー」に設定し、年間42万人以上が命を落とすマラリア撲滅に力を注ぐ。まだワクチンは開発されていないが、抗マラリア薬としてメフロキンが内服薬として用いられている。新型コロナウイルスにも適用できないか、その研究が進む。
ともあれワクチンで防げる病気は、コロナ猛威の時期でも、しっかり予防接種を受けて防ぐことが必要だ。外出自粛でいう「不要不急の外出」に、予防接種は含まれないのだから。(2020/4/19)
posted by JCJ at 10:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする