2020年04月22日

【好書耕読】「食なき国」への危機が迫る!=伊藤洋子(JCJ賞選考委員)

 近い将来、食糧危機の時代が必ずくる。先進国中最低の食料自給率はいまや37%、大半の食料を他国に依存する異常さが常態化している。
 1月、安倍首相の施政方針演説でガクンときた。自給どころか農産物輸出を声高に叫ぶばかり。軍事に前のめりになるものの、命を支える食の安全保障への配慮は、この宰相には関心外であるらしい。
 農地の大規模化で競争に強い農業を目指すとするが、本当に強い農業とは補助金に頼らず生業として営々と続けてきた家族農業=小規模農業だと、農民作家の山下惣一は自著『日本人は「食なき国」を望むのか―誤解だらけの農業問題』(家の光協会)で吼える。しかも誤解を拡散してきたのはメディアであり、これに洗脳された消費者だとも言う。

 輸出型農産物に精を出すのは大規模な企業型農業である。安倍が重視するのは世界市場を相手にする農業。行きつく先は農業はあれど「食なき国」への道だと山下は言う。
 安倍の演説文を読めば読むほど総花的で中身=具体策がなく、不都合な事実には蓋をしたままなど、指摘すべきことは満載だけど、メディアも野党もスルーの感の食と農の問題が気になって、本書の読み返しとなった。
 超高額兵器で重武装したその陰で、餓死者続出、医療崩壊なんて悪夢はまっぴらだ。
 新型コロナウイルス禍で世界が大騒動する中、アフリカで異常発生したバッタが間もなく中国に達するという。世界食糧危機は現実なのだ。

 本書が発行された2014年を、国連は「国際家族農業年」と定めた。以来、家族農業=小規模農業は持続可能な農業と飢餓及び環境問題への軸とされてきた。切り捨てられ続けてきた日本の伝統的農業こそ、その見本である。
 「強い農業が生き残るのではない、生き残った農業が強いのだ。」その農業は自給自足を原理とし、あまたの食を支えてきた。山下の持論が突き刺さる。
『日本人は「食なき国」を望むのか』.jpg
posted by JCJ at 10:18 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする