2020年04月23日

【隅井孝雄のメディアウオッチ】 経済減速させたくない 延期の五輪実施で花道飾る―これが安倍首相の思惑

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 安部晋三首相は4月7日、改正新型インフルエンザ特別措置法による初の「緊急事態宣言」を発した。東京など7都府県を対象としたが批判を受け、4月16日全国を対象にした。朝令暮改だ。
 7日の会見で安倍首相は「欧米のようなロックダウン(都市封鎖)ではない。電車、バスなど公共交通機関は運行、道路を封鎖はない」と強調した。経済を減速させない思惑がかいま見られる。
 今回の緊急事態宣言には、各国メディアは批判的だ。「強制力が不足しているため、感染拡大に大きな変化がないだろう」(韓国聯合ニュース)、「対応が遅い、経済への打撃を避けようと、意図的に対応に時間をかけた」(CNN)、「遅すぎた。東京の感染拡大は容易に制御できないレベルに達している」(英BBC)など手厳しい。
 アメリカ大使館は日本に滞在中の米国民に直ちに帰国するよう注意情報を出した(4/3)。「日本は検査を広範に行わない。罹患割合を正確に把握できない、感染の急速拡大の恐れもある」と警告した。日本国内でも政府が緊急事態宣言を発令は「遅すぎた」が81%に達した(4/13読売新聞) 。
108兆円はまやかし
  政府は緊急経済対策として、108兆円を支出すると閣議決定(4/7)、減収世帯への30万円の現金給付、売り上げ減少の業者への最大200万円の給付金などを発表した。108兆円という数字には融資などの金融措置も含まれ、政府の財政支出分(いわゆる真水)は39.5兆円止まる。ところが、10日後、減収世帯への支給を取り下げ、全国民に一律10万円配布すると変えた(4/17)。
 全国知事会は4月8日自粛要請に応じた企業への損失補償を求めた。吉村洋文大阪府知事は、「行政が営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調した。しかし安倍総理は「落ちた売り上げをすべて補償することはできない」と拒否した。東京都は独自に休業補償する。
低い感染検査数
 安部首相の失態は2月初旬クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号が日本に接近、水際で食い止めるとして、船内に乗客、乗員3533人を閉じ込めたときから始まる。
 船内で感染が広がる一方、1月16日に国内で初の新型コロナウイルス感染者が出たのに、PCR検査など対策が不十分のまま推移した。
 100万人当たりのPCR検査受験者数は英国,6,164.5人(3/12), 韓国,4,831.3人(3/13), 中国(広東省),2,820.4人(2/24)に対し日本は80.5人(3/12)、世界23位に止まる(Our World Data3/15)。
  PCR検査は当初、国立感染研究所と各地方衛生研究所に限られたが、2月20日以降民間の医療機関で受検できるようになった。それでもなお検査が進まないのは、医療機関に受診者が集まることを避け、感染が疑われる人、重症者の検査を優先しているからだ。
  休校宣言(2/27)も唐突だった。専門家との協議なしの閣議決定で、しかも「ここ1,2週間が極めて重大な時期だ」との発言は、感染拡大について誤った情報を国民に与える結果となった。フェイク発言だったといわざるを得ない。今となって見れば休校措置は意味ない結果となった。
歴史に名残したい
  新型コロナウイルスの世界蔓延で、安倍首相はオリンピック委員会のバッハ会長との電話会談(3/24)で東京五輪の一年間の延期を提案、IOCも同意した(3/24)。
 もともと新型コロナウイルスを「水際作戦」で抑え込もうとした安倍首相には、東京五輪を開催したい、日本の経済には影響を与えたくないという思惑があった。しかし日本でも世界でも感染拡大は続き、世界のアスリートが次々に危機感を発し、開催を断念した。
 3月30日の決定よると、東京五輪とパラリンピック2020は一年後、2021年7月23日から2021年9月5日の日程となった。一年ずらせば、2021年9月の総裁任期内ということになる。五輪とパラリンピックを花道に、9月に任期満了を迎えられるとの思惑が見られる。だが一年後新型ウイルスが収束しているという保証はない。
NHK指定公共機関に
 安部首相の7日の緊急記者会見(7都府県緊急事態宣言)は19時から行われNHKなど民放キー局が生中継した。首相の約25分演説の後記者と応答、挙手がある中20時過ぎ「次の日程がありますので」として終了した。次の首相の姿はNHKの「ニュースウォッチ9」生出演だった。
 番組では首相の主張をそのまま伝えるのみで、問題点を問いただすことはなかった。
 「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」では日銀、赤十字などと並んでNHKが指定公共機関とされた。従来から政権寄りのNHKは、政府のコロナ対策への協力にアクセルがかかっている。国境なき記者団(本部パリ4/7)、日本ジャーナリスト会議(4/11)、などが独立した報道を阻害するとして反対声明を出し、NHKを指定から外すよう要求している。
海外報道もチェック
 テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショーで「首相が法改正にこだわるのはごてごて批判を払しょくするためだ」、「マスクを医療機関などで重点的に配備する必要がある」(3/4)などの発言に対し、「内閣官房国際感染症特別来策室」や「厚生省」がツイッターで批判、報道を正すよう求めた(3/5, 3/6)。
  国会のやり取りでも、宮下一郎内閣府副大臣は「民放でも、この内容を流してもらうと指示し、変更や差し替えをしてもらうことはありうる」(3/11衆院法務委)と発言した。のち撤回したが本音がこぼれたものだ。
 安部首相の感染対策としてマスク2枚配布の発表(4/1)は、国内の批判に加え、海外メディアからも「アベノマスクはエイプリルフールか」(Fox News4/1)など嘲笑、揶揄が乱れ飛んだ。
 それを意識してか“批判をチックし、正しい情報流すために”との予算24億円を外務省が組んだ。主要20か国のなどのSNSをAI(人工知能)も活用してチェック、“正しい情報を発信する”という。厚生省も国内海外に向けて「ネガティブ情報の払しょく」、「正しい情報の発信」を行う予算35億円が組まれた。
  憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的最低限度の生活を営む権利を有する、国はすべての生活部面について、社会福祉及び社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされている。「健康で文化的な最低限の生活」を取り戻す日が一日も早く来ることを、願ってやまない。
隅井孝雄


posted by JCJ at 15:50 | 隅井孝雄のメディアウオッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする