2020年05月08日

【リレー時評】 「放送と通信の融合」で地域情報保護が課題=隅井孝雄

 NHKの番組がネット上で見られるネット同時配信(NHKプラス)が4月1日から本格配信を始めた。先立って、3月1日から試験的配信を行っていたが、一ヵ月の試行期間内に33万件の利用申し込みがあり、NHKはほくほく顔だ。
 主要民放キー局はこれまで、NHKの巨大化に警戒感を抱き、予算に一定の限度を設けるなど上限を主張してきた。ところがいよいよ迫った段階で、日本テレビなどキー5局が秋以降ネット同時送信を開始しようとしていることが明らかになった(2/12共同)。若者層のスマテレビ離れを食い止めるためスマホなどネットで見られるようにしようというのだ。
 ネット同時配信とは、テレビ番組を電波で送りだすと同時にインターネットにも配信するもので、テレビと同じ画像を同時に視聴できる。今までは放送とは別に個別の番組をユーチューブなどで送り出してきたが、今後はネットでテレビチャンネルそのものが視聴できることになる。NHKと民放が同時配信で足並みをそろえる。
 この結果「放送と通信の融合」が本格化することになるが、しかしローカルニュース、ローカル番組が置き去りにされるという問題が残る。
 今のところNHKプラスは受信料を支払っている家庭のみに限り午前6から午前0時までおよそ18時間の総合、ETVの番組をなにもかも丸ごとネット上で同時間視聴できるほか、追いかけ再生、一週間見逃し視聴もある。
 といっても東京を中心とした関東広域圏での放送がネット上に流れ全国で視聴されることになる。
 民放キー局で最も積極的な日本テレビの場合、午後7時から午後11のプライムタイムの番組をネットに流す計画だ。TBS、フジテレビ、テレビ朝日などでもプライムタイムに限らず、若者が多い深夜帯のドラマ、バラエティーなども配信対象と見ている。TVerという見逃し番組を見る仕組みと連動することになるだろう。
 テレビ放送とは別の視聴者の属性に合わせたターゲットCMをネット上に挿入、新しい収入源にしたいと考えているようだ。視聴者に当面、課金はない。
 民放の本格的送信は一番早い日テレは秋以降とされていたが、試験配信する予定だった東京五輪が消えたので、実施は繰り延べになるかもしれない。
 民放テレビが地方局とキー4局の組み合わせで全国ネットワークとなったのは1960年前後だった。それから60年にわたり地域の情報文化と全国的な情報文化を組み合わせたメディアに成長した。それが「放送と通信の融合」の完成によって、東京情報、東京文化一色になる。地方局は視聴率が低下するおそれにさらされる。
 NHKと民放キー5局に地域情報、地域番組をどう守るのか真剣に検討することを求めたい。
隅井孝雄
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 13:40 | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする