2020年05月12日
広がるファクトチェックの取り組み 国連も声明 FIJが国際プロジェクト=鈴木賀津彦
新型コロナウイルス感染症に関連するニュースが連日報道され、世の中に不安感が広がる中で、横行するデマやフェイク(虚偽)ニュースに警鐘を鳴らし、ファクトチェック(真偽検証)に取り組む各国の団体が、国境を越えた協力をして成果を上げている。国連のグテレス事務総長が4月14日、パンデミック(世界的な大流行)をめぐり、「誤情報の危険なまん延」に警鐘を鳴らす声明を発表するなど、ファクトチェックの国際連携はますます重要性を増している。
台湾と連携して成果
国内のファクトチェックを推進・普及するためのプラットフォーム団体「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」(理事長・瀬川至熨¢蜍ウ授)が、コロナ関連の国内外のファクトチェック記事を紹介する特設サイトを開設したのは今年2月。3月には「国際協力プロジェクト」をスタートさせ、海外のファクトチェック団体への日本に関する調査の協力・支援をする一方、国内団体には、海外情報の翻訳を含めて国内外の調査の支援を行っている。
台湾で河野太郎防衛相のツイッター投稿を模した画像が拡散されているのを、台湾ファクトチェックセンターが見つけ、FIJに調査を要請。協力した取材の結果、画像は虚偽と判明し、同センターが3月13日に記事にした。日本でもウェブメディアの「インファクト」(立岩陽一郎編集長)が「河野防衛相を装った虚偽ツイートが台湾で拡散」の見出しで詳報、連携した報道ができた。
ツイッターは「台湾からの五十万のマスク」が日本に着き感謝の意を述べた内容だったが、マスク不足なのに政府が裏で日本に送っているように見せて、政権を批判するために虚偽情報を流したとみられる。
FIJの特設サイトは「ウイルスの特徴、予防、治療法」「感染者の状況」「当局の対応、その他政治的な言説」「その他様々な言説・うわさ」に分けて、「国内編」と「海外編」に分け検証記事を掲載している。海外編は、各国のファクトチェック団体や海外メディアの記事を日本語の記事にして載せている。近く日本に関する特設サイトも設ける予定だ。
国連も事務総長声明
根拠のない治療法や噂を含めた偽情報などが世界中を駆け巡り、世界保健機関(WHO)は早くから「インフォデミック(Infodemic、情報の伝の意味、information epidemicを短くした言葉)」への警戒を呼びかけている。国連のグテレス事務総長は14日の声明で、「新型コロナウイルスのパンデミックと世界が闘う中、新たなまん延が発生した。誤情報の危険なまん延だ」(AFP記事から)と述べた。
グテレス氏は、「健康に関する有害な助言や、いんちきな解決策が増殖している」「放送電波はうそで満ちている」「見当違いの陰謀論がインターネットに影響を及ぼしている」と指摘する一方で、記者や情報の正確性・妥当性を検証する人々を称賛している。そして「団結して世の中のうそやくだらない言動を拒否しよう」「より健康的で、平等、公正な、立ち直りの速い世界をつくろう」と訴えたのだ。
だまされないために
熊本県では、副知事がSNSで受けたデマ情報をコロナ対策関係者に拡散するという問題を起こし、謝罪会見する事態になったが、同様の危機は誰にでも起こる状況だ。インフォデミックといかに向き合うか、ファクトチェックの取り組みを広げたい。
鈴木賀津彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号