2020年05月18日

コロナ感染拡大 医療崩壊は「人災」 病床削減や病院統廃合 対策では後進国か=杉山正隆

  新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づき福岡など7都府県に緊急事態宣言が4月7日発出された。商業施設が休業するなど生活への影響が既に出ている一方、安倍首相は憲法改正への議論が進むよう期待感をにじませるなど、危険な動きが見え隠れする。
 同宣言は8日から5月6日までの約1カ月間だが延長される可能性が高い。臨時医療施設のための土地・建物の使用が所有者の同意無しに出来るなど住民の私権の制限もできる。感染爆発等には効果が期待される一方、その実効性より心理的な悪影響が大きく、中小企業等の多くの資金繰りが困難になりつつある。制度的な保障策を政府は打ち出す必要があり一部は実行もされているが、タイムラグが大きく、必要な資金が十分に供給されるか否か疑いがある。
 今回、感染拡大が続く「新型コロナウイルス」(SARS-CoV-2)は、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)の呼吸器に重篤な症状をもたらす2種類のほかに、「風邪」として知られる4つの計6種類がある。人類に馴染みの深いウイルスだ。今回の感染症(COVID-19)は80%ほどは軽度で推移する「軽症者が多い」特徴がある一方、20%ほどが増悪し2〜3%ほどが非常に重篤化する。甘く見ると怖い感染症でもある。
 自分が感染したと気付かないまま治癒する無症状感染者が多く、想定されている「新型インフルエンザ」に比べると「コントロールできない感染症ではない」との見方も強い。ワクチンなど根本的な治療法が開発されなければ、半年ほどで一旦収まるとしても強弱を繰り返し、二、三年は流行の可能性が指摘されている。ただ、「それでも、コロナはありふれたウイルス。怖がりすぎるのは間違っている」とも。
 そもそも新たな感染症が予想されるとして対策を求める声が医療関係者から常々上がっていたのに、安倍首相は昨年10月、「病床の削減」をあらためて指示するなど入院病床を減らし続けていた。公立・公的病院の統廃合も強力に進め、保健所数は半減、医師・看護師数も抑制を続けていた。これらは全てほぼ一貫して自民党政権の手によるものだ。つまり、今回の「医療崩壊」は自民党政権による「人災」なのだ。
  閣僚に専門家集団を揃える台湾はじめ、韓国、シンガポール、欧米などはあっという間に保障や援助策を策定し実行に移した。日本は後手後手に終始したうえ、弱い人から犠牲者が出始める「アベノ・コロナ恐慌」が庶民を襲っている。その政策を監視するメディアの役割は予想以上に大きい。
 「新型コロナはしょせん、新型の風邪に過ぎない」(感染症専門家)との声もあるが、強毒性の鳥インフルエンザ流行の懸念が強まっている中、日本での混乱ぶりに各国メディアから注目が集まっている。死者が少ないことへの関心が集まる一方、医師の少なさや病床削減政策を紹介して「日本は感染症対策の後進国だったのでは」などと驚く論調が少なくない。
 インフルエンザの例を見ても、開発が期待されるワクチンも万能では無い可能性が高い。オリンピックを始め介護労働者なども来日外国人に頼る経済政策等に大きく舵を取った日本で、感染症を水際で完全で止めることは期待できない。
 当面、無症状者に2週間限定の「避難所」を各地に作る必要があるが、しっかりとした予算を取ったうえで、医療抑制政策を抜本的に見直さなければ感染症との闘いには勝てない。医師や看護師などを増員し、病床を増やし、公的公立病院の機能を強化する必要がある。憲法25条(生存権)を活かし、国民の健康や生命を守る政策を打ち出すべきなのだ。
杉山正隆
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年4月25日号

posted by JCJ at 10:45 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする