2020年06月15日

番組改変事件の再現か 自主自律に新たな疑念 NHK『バリバラ』の再放送 突然中止=河野慎二

 社会的少数者(マイノリティー)のバリアをなくすためのNHK・Eテレ番組で異変が起きた。
 4月23日に放送された「バリバラ桜を見る会〜バリアフリーと多様性の宴〜第一部」は、スタジオに桜を見る会≠セットして、性暴力被害と闘うジャーナリストの伊藤詩織さんや在日韓国人への差別撤廃に取り組む崔江似子(チェ・カインジャ)さんらが出演、性暴力や差別、ヘイトをなくす運動について、自らの体験を踏まえて語り合った。
 再放送突然中止
 番組では、安倍首相を模した「アブナイゾウ総理」が「公文書 散り行く桜と ともに消え」と一句詠み、麻生副総理をモデルにした「無愛想太郎」が登場。笑いを織り交ぜながら核心を衝く番組構成が視聴者の心を捉えた。
 ところが、26日午前零時からの再放送が中止され、4月2日に放送した「新型コロナ自粛′沒「会議」に差し替えられた。
筆者もその一人だったが、Eテレにチャンネルを合わせた視聴者は「何があったのか」と仰天し、「2001年NHK番組改変事件の再現か」と懸念の声が上がった。
ネトウヨが攻撃
 差し替えの理由についてNHKは「コロナ感染の現状を鑑みて、判断した。圧力などはない」と説明しているが、信じる人は少ない。
  放送された「バリバラ」に対し、ネトウヨはツイッターなどで「NHKなめとんのか?反政府番組じゃないか」「左巻きの表現の自由」などと攻撃を集中。自民党の小野田紀美参院議員も「この非常時にこんなものを作る時間があったら、今困っている国民が利用できる制度や申請の方法を1秒でも長く放送すべきでは?」とツイートした。
東京からドンときた
 東京新聞(4月29日)は「再放送中止は前日まで兆候らしいものはなく、大阪は寝耳に水。東京からドンときたようだ」と伝えている 。
 直接圧力があったのか、NHK上層部が忖度したのかは不明だが、本番30分前の差し替えは異常と言う他はない。
 NHKの姿勢に疑惑が深まる中「バリバラ」第二部の放送がどうなるかが注目されたが、4月30日、無事放送された。再放送も5月4日未明に行われた。
 その中で伊藤詩織さんは自身が法律に守られなかったことに一番ショックを受けたことを明らかにし「助けてと言えるスペースが社会になかった。そこを変えて行きたい」
と語った。性暴力根絶を訴える伊藤さんの強い決意が伝わってきた。
 第二部放送を守る
 今回、第一部の再放送は中止されたものの、第二部は完璧な形で放送を実現できた背景には、NHK放送現場の大変な努力があったと聞く。
 あるNHKOBは「上層部の圧力が加わる中で、第二部の放送を守るために、第一部の再放送差し替えを苦渋の決断で呑んだのではないか」と推測する。
 別のOBは「この程度の番組さえ放送できないとは、NHKに真面目な判断を期待するのは当分無理」として「安倍の影響を排除することが先決」と強調する。
 唐突で不可解な「バリバラ第一部」の差し替え問題は、NHKの自主自律に新たな疑念を抱かせている。「NHKとメディアの今を考える会」は6日、差し替えた理由の明示を求める公開質問状を送った。NHKは一日も早く、視聴者への説明責任を果たすべきだ。
 河野慎二
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年5月25日号


posted by JCJ at 08:00 | NHK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする