広島県における新型コロナの感染者数は6月16日現在、164人(再陽性4人と県外空港検疫所1人を除く)だ。死亡は3人。5月4日以降は46日間、県内での新規感染者数は確認されていない。入院患者は14日、3月19日以来となるゼロとなった。
そんな状況の一方でコロナ禍は地方政治の「素顔」を思わぬかたちで浮かび上がらせた。
感染者が拡大の一途をたどっていた4月21日、湯崎英彦知事は感染防止のために休業や営業時間短縮の要請に応じた中小業者に県独自の支援金を最大50万円支給すると発表した。その際、「財源が圧倒的に足りない」ことを理由に、国が全国民に一律給付する10万円について、県職員が受け取った分を基金に積み立てるなどして対策費の原資として「活用したい」と表明したのである。
直後から、県民や県議会から批判や抗議が相次ぎ、知事は翌日、「誤解を与える表現だった」として発言を撤回した。
この騒動が起きる12日前にもこんなことがあった。今年9〜11月に県東部で開催予定の国際芸術祭「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」の総合ディレクターが記者会見し、3月末で辞任したことを明らかにしたのである。
外部委員会が展示内容を事前確認するという県の方針に抗議したが聞き入れられなかったための辞任で、出展予定作家の7〜8割に当たる約30人も県の方針に反対して不参加を決めていた。
この辞任会見翌日、湯崎知事を会長とする実行委員会は、開催の中止を決め、発表した。中止の理由は、コロナの感染拡大だと説明した。コロナ以外にも理由があるのは明らかで、コロナを口実にした対応は将来に禍根を残すに違いない。
雇用への影響も深刻だ。厚労省によると、広島県の新型コロナの影響による解雇・雇い止めの見込み人数は6月12日時点で522人。5月29日時点から112人増と急増している。
12日付中国新聞は社会面で、解雇・雇い止めにあい生活苦にあえぐ女性たちの実情を報道。パート先の飲食店から解雇を告げられた広島市のシングルマザーの「もう今のマンションには住めない。とてもじゃないけど家賃を払えない」という悲痛な声や、事務職として勤めるメーカーから6月末で契約打ち切りを通告された広島県廿日市市の派遣社員女性の「感染しないかおびえながら出社して次は雇い止め。私たちは『使い捨て』なんでしょうか」という怒りの声を伝えている。
難波健治(JCJ広島)