新型コロナウイルスの感染拡大で4月7日、埼玉県は、政府の緊急事態宣言の対象となった。筆者が生活している、さいたま市南区でも、宣言以前から営業自粛で、街の活気は失われつつあったが、宣言によってそれに拍車が掛かった。
地域経済が機能せず
南区は電車で15分程度で東京都内に行ける利便性から人口約18万人で、世帯数とともに市内の区の中で一番多い。この人口や世帯を目当てにさまざまな店舗が進出し、必要な物資は、たいがい購入でき、飲食店なども多く、生活する上で不便を感じたことはなかった。
しかし、企業が運営する系列店は一斉に営業自粛に。日頃は無意識に便利さを享受していたが、店舗の休業で「不便」となりストレスを感じた。活気が失われた街の風景を目にするたびに、個人商店や商店街など地域の経済システムが機能していないことを痛感した。地元に根付いた商店や商店街が機能し、コミュティーがあれば不便さをそれほど感じなかったろう。
心意気示す居酒屋「甲子園」
多くの店舗が休業する中で、県北部の中心地・熊谷市では、個人経営の居酒屋が営業を続けていた。JR熊谷駅周辺の繁華街は飲食店が並び、にぎやかだが、コロナウイルスの影響で多くの店舗が休業。その中で居酒屋「甲子園」は店を開けた。
夏の全国大会に出場した元高校球児の店主・橋本哲也さんのきどらない気っぷのよさが売り物で、そういう店が大好きな地元の人が集う。アルバイトの女性には休んでもらい、橋本さんと二男で店を開けた。
熊谷はかっては、個人の飲食店が多く、各店の持ち味があった。今は、企業の系列店が多くなっている。繁華街に地元らしさが薄れていくのを日頃から憂いていた橋本さんは、熊谷のにぎわいの「灯」を消してはならないとの思いから店を開けたという。
地元の人たちに店を長年、ひいきにしてもらっているのに「緊急事態宣言」が出たので「休みます」と、自分たちの都合を優先するわけにはいかないという。自粛でストレスがたまりやすいこういう時こそ、お客の心を癒したいう地元の店としての自負がうかがえた。
「蔵のまち」に観光客の姿も
埼玉では秩父地方とともに、「蔵のまち」として有数の観光地である県西部の川越市を緊急事態宣言解除後の6月初旬の平日に訪れた。蔵造りの建築が並ぶメイン通りは、通常であれば、平日でも、県内外の観光客や韓国、中国など外国人観光客で、にぎわいを見せていた。
地元の人に話を聞くと、緊急事態宣言で多くの店が休業していたという。解除されたとはいえ、以前のようにぎやかさを取り戻すには、時間がかかりそうだと、地元の人はみていた。しかし平日も観光客の姿が、あちこちで見られた。
佐藤達哉