2020年07月01日

沖縄県知事選 議会運営 綱渡り 新基地NO過半数確保 いつまで続く政権の民意無視=米倉外昭

開票結果を選挙事務所で待つ翁長雄治.JPG
6月7日に投開票が行われた沖縄県議会議員選挙(48議席)は、玉城デニー知事の与党が、改選前から1議席減らしたものの過半数の25議席を確保した。辺野古新基地に反対する県政を支持する民意が改めて示された。
薄氷の過半数
ある全国紙は10人を超える記者を送り込んだという。なぜ全国的に注目されるのか。
県議会で与党が多数を維持するかどうかは、政府と対立を続ける県政の動向を左右し、2年後の県知事選に直結する。そして、日米同盟の在り方に影響するからである。結果は、「薄氷の過半数」だった。
自民党は今回、初めて新基地容認を明確にした。さらにコロナ対策などへの政府批判が逆風になると見られていた。また、中立・非与党の公明党がコロナ禍を理由に現有4議席から公認を2議席に減らした。
しかし結果は、自民が議席を14から17に増やした一方で、与党は社会大衆党委員長など重鎮が議席を失った。議席を増やせなかったことに、与党陣営から「事実上の敗北」との声も漏れた。
ただ、辺野古新基地反対を表明している議員は非与党も加えて29人おり、全体の6割を占める。新基地反対の沖縄の民意は変わっていない(人数はメディアによって若干異なる。琉球新報報道にもとづいた)。
翌日の会見で菅儀偉官房長官は、自民が議席を増やしたことを問われ「(辺野古について)かなり理解が進んでいるのではないか」と発言。既定方針通りとして、選挙から5日後の12日、約2カ月ぶりに埋め立て工事を再開した。玉城知事は「民意は明確だ。大変遺憾」と反発した。
コロナ禍で運動が制約されたことから、投票率低下が心配されていた。投開票日が大雨だったこともあり、初めて5割を切る46・96%だった。痛恨の数字である。
揺れるオール沖縄
これからどうなるか。玉城県政と政府の、司法の場も含めた闘いはさらにし烈さを増すだろう。県政にとって綱渡りの議会運営となり、基地問題での対政府訴訟や訪米活動などに支障が出かねない。
翁長雄志前知事が「イデオロギーよりアイデンティティー」を合言葉に作り上げた「オール沖縄」は、各勢力の足並みの乱れが目立っている。知事選に向けて体制構築が急務だ。
投票率の低下は、政治に対する無力感、あきらめの反映でもある。これは、政治家だけでなく市民運動やマスコミの課題でもあろう。
しかし、沖縄に無力感やあきらめが広がっているとしたら、それはなぜだろうか。長年にわたり何度も意思を示してきたのに、無視され続けるからではないか。そして、なおも選択を迫られ続ける。そんな地域がこの国にほかにあるだろうか。
 沖縄は保革対立の構図の下では「基地か経済かが争点」とされてきた。それが翁長前知事以後は、ヤマトとの「対立か協調か」=「自立か従属か」に変わった。「ヤマト」とは日本政府にとどまらない、日本人一人ひとりの意味でもある。沖縄の選挙は、自分や身近な政治、政府の在り方を問う映し鏡であると、日本の全ての人々が考えるべきだろう。
米倉外昭(JCJ沖縄世話人)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

posted by JCJ at 06:03 | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする