2020年07月04日

コロナ禍取材最前線 Zoomぶっつけ本番 感情を読み取る難しさ 始めは抵抗感 有効な面も=知念愛香

             オンラインで取材する筆者.jpg
 コロナ問題の取材現場はどうなっているか。通信社記者に、この間の体験記を寄せてもらった。
      ◇
  国内で新型コロナウイルスの感染が広がり、現場での取材環境は目まぐるしく変わった。対面取材はしづらくなり、電話やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などのオンライン取材が増えた。意義があると思って取材した人の名前を掲載したところ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で思わぬ批判がきたこともあった。これからは「新しい生活様式」ならぬ「新しい取材様式」のための気遣いが求められている。
 目線は時々下に
  初めて取材先からビデオ通話でのやりとりを求められた際、正直に言うと困惑した。電話でやりとりするよりも相手の表情は見えるが、パソコンの画面に向かって話しかけるという点からも、対面取材とは圧倒的に違う。取材先は胸の内を明かすような発言をしてくれるのか……。どう取材を進めたら良いのかが全く分からず、最初の「Zoom取材」はぶっつけ本番となってしまった。
 結論から言うと、オンライン取材は問題なくこなせるものの、相手と打ち解けたり、表情などを読み取ったりするにはノウハウが必要だ。基本的に、ビデオ画面には私の顔しか映らないため、話を聞きながらメモを取っている手の動きや、ノートにペンを走らせている様子は見えない。相手から見ると、私はなぜか目線を時折下に落とし、話を聞いていないような態度を取っているように思われているかもしれない。
 また、目線にも気を付けなければならない。画面上の相手の目を見ても目線は合っていない。視線を合わせるには、相手の目を見ずにカメラを見なければいけない。こうした目線ひとつでも、対面や電話取材とは違う。「私がどう見えているのか」に気を遣う必要がある。
 リラックスする
 とはいえ、出張しないと会えないような遠方の人と話をする場合は非常に有効だ。また、自宅で取材を受けてくれた人からは「リラックスして話せた」と言われたこともある。最初は抵抗感があったものの、今ではメリットとデメリットをしっかり認識した上で、新たな取材手法として上手く取り入れていきたいと考えている。
 オンライン取材の反面、緊急事態宣言中や解除後の街を原稿にするために、しばしば街に繰り出した。緊急事態宣言下でも、自らの生活のために営業する飲食店や、なじみの店を支えるために足繁く通う常連客など、様々な事情を抱えた人と出会った。
 これは緊急事態宣言の解除直後の話だが、神奈川県・湘南の海岸である親子に出会った。母親の「子どもの学校がそろそろ始まるが、休校期間が長かったため夏休みがなくなるかもしれない。今まで外出できず、夏休みもない可能性が高い分、今のうちに遊ばせてあげたい」との言葉が印象に残った。
 許可を得た上で雑観として記事を出したが、SNS上で「緊急事態宣言が解除されたからといって遊びに行くなんて、子どもが感染してもよいと思っている親なんだろう」などの批判的な意見が散見され、驚かされた。
 監視し合う風潮
 社内では、街で取材した人の名前を掲載したところ、発言をめぐって取材相手本人のSNSに誹謗中傷のコメントが届いたため、ネット上の記事を匿名に切り換えたこともあった。
 「自粛警察」という言葉が登場したように、コロナ禍では同調圧力や市民が監視し合う風潮が高まった。同調圧力に迎合するつもりはないが、状況に応じて取材相手が誹謗中傷を受けないような記事の書き方に気を遣う必要があると考えている。     
知念愛香
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号

posted by JCJ at 09:32 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする