2020年07月17日

「テラスハウス」事件とネット規制 「あおり」と制作責任 メディア支配強化狙う政府=岩崎貞明

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 フジテレビが制作・放送し、フジテレビオンデマンド(FOD)やネットフリックスでインターネット配信されていた人気番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花さん(写真)が22歳の若さで亡くなった。SNSでの誹謗中傷を苦にした自殺だったのではないか、ということで、フジテレビの遠藤龍之介社長はお悔やみのコメントで「同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります」と表明した。
  番組が言う「台本は一切ございません」という体裁は「リアリティーショー」と呼ばれ、90年代からアメリカで人気を博し、各国に広がった。そして、現実とは異なる設定を押しつけられた出演者が自殺するケースも既に多数報じられている。
 悪役レスラーとして活躍していた木村さんは、番組でも悪役を引き受けさせられ、そう見えるような編集が施されていたと推測される。その点フジテレビなどの制作責任は免れないが、一方でネット社会が攻撃に拍車をかけたとも言える。
 『テラスハウス』はネットフリックスでの配信が先で、フジテレビの地上波放送はその一ヵ月ほど後という「ネットファースト」で制作されていた。放送枠にとらわれない番組編成が可能なネット版は、地上波版よりも番組尺が長く、CMも挿入されず、また過去分の繰り返し視聴も可能になっている。
 番組は、出演者たちが共同生活しているパートと、その様子を見ながらタレントたちがトークを展開するパートが交互に現れる形で進められる。そしてネット版では、タレントたちのトークのシーンがより長く編集されていた。ここでタレントたちが番組を盛り上げようと過激な発言をして、それがSNSへの「あおり」となって、木村さんを追い詰めていった可能性もある。
 この事件を契機に、政府はSNS規制の動きも見せている。ネット上の人権侵害は厳しく取り締まるべきだと思うが、政府批判も一緒くたにされては、言論・表現の自由が奪われ、政府のメディア支配が強化されてしまう。慎重に見極めたい。
岩崎貞明(放送レポート編集長)

posted by JCJ at 01:00 | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする