2020年07月18日

【新型コロナ禍】 北海道 公共交通網 崩壊の危機=山田寿彦

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 北海道では国の緊急事態宣言解除を挟み、2カ月以上に渡り新規感染者が連日報告されている。21日現在の感染確認者数は全国4番目の1180人(死者95人)。人口が集中する札幌圏が中心だが、観光などサービス産業の比重が大きい北海道の経済的ダメージは甚大で、影響は道内全域に及んでいる。
  感染のクラスター発生はライブハウス、病院、老人福祉施設など。最近では岩見沢市内の美容室、札幌市内の昼カラオケでのクラスター発生が報告され、後者は全国ニュースになった。
 老人福祉施設で最も悲惨な事例となったのは札幌市北区の茨戸アカシアハイツだった。スタッフも含めて90人以上の感染者を出し、15人が死亡した。うち11人は入院もできず、施設内で亡くなった。施設内に事実上閉じ込められた背景には札幌市保健所の判断があったとされ、今後の検証が待たれる。
 北海道では多くの外国人を含む約200万人の来場者があったさっぽろ雪まつり(1月31日〜2月11日)後に感染第1波が襲来した。2月28日に鈴木直道知事は国に先駆けて独自の緊急事態宣言を出し、学校を一斉休校としたほか、外出自粛を要請した。
  一旦収束に向かったため、知事の判断は称賛された。しかし、世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言は1月30日。結果的に第1波の原因となった可能性が高い雪まつりを何の注意喚起もせずに開催した札幌市の判断の是非については検証されていない。
 多くの企業が経済的ダメージを被る中、JR北海道は深刻な経営難に直面している。19年度の線区別収支状況によると、道内23線区すべてが赤字となり、赤字総額は551億円余。北海道新幹線(新青森−新函館北斗)は線区別で最大の93億円余の赤字となった。コロナ禍が直撃した第4四半期だけでこれだけの影響が出ており、今年度はさらに深刻な事態に陥ることが懸念される。
 もともと多くの不採算路線を抱えて出発したJR北海道は経営基盤が極めて脆弱で、今後は「国や自治体が助けてくれなければ、企業存続のために不採算路線は切り捨てざるを得ない」と開き直ることも予想される。北海道の公共交通網が崩壊の危機に直面する可能性をコロナ禍ははらんでいる。
山田寿彦
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年6月25日号


posted by JCJ at 01:00 | 新型コロナ禍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする