2020年07月22日

「抱きつき取材」見直しを――新聞労連らが6つの改善提言をメディア幹部に送付=藤森研 

  今年5月に発覚した黒川弘務・東京高検検事長と記者たちの賭けマージャン問題は、黒川氏の辞任と検察庁法改正案の廃案で落着した。政権の検察支配の企ては、ひとまず頓挫した。
  賭けマージャン問題は、他方、メディアにも大きな一石を投じた。コロナ緊急事態下、渦中の黒川氏と産経や朝日の記者らが賭けマージャンに興じていたことがあからさまになり、権力者と記者のずぶずぶの関係が白日の下にさらされた。特ダネほしさに取材源に見境なく近づくこうした手法を、元同僚は「抱きつき取材」と喝破した。それは往々にして癒着に陥り、ヨイショ記事に帰結する。
 濃淡はあれ、日本のメディアは取材相手と個人的に親しくなって情報を得ることに精力を注いできた。夜討ち朝駆け、ひそかな会食……。賭けマージャンもその延長上にある。取材相手に「食い込む」ことに長けた記者は、社内で重宝がられ、高い評価を得てきた。
 しかし、そうした取材手法が他方で、「権力監視」というジャーナリズム本来の責務を見失わせ、権力に甘い報道姿勢を招いてしまっていることを多くの市民が見抜いている。改革が必要な時代だ。
 メディア関係者たちからも、自省の動きが出始めた。南彰・新聞労連委員長や林香里・東大大学院教授らが、今回の問題を機に「ジャーナリズム信頼回復のための提言」をまとめ、7月10日、全国の新聞・通信・放送129社の編集局長、報道局長に送った。
 提言は、賭けマージャン問題について「水面下の情報を得ようとするあまり、権力と同質化し、ジャーナリズムの健全な権力監視機能を後退させ、民主主義の基盤を揺るがしていないか」と問題提起。改善のため、以下の6点を提言した。
@ 報道機関は権力と一線を画し、記者会見などの場で責任ある発言を求め、公文書の保存・公開の徹底化を図るよう要請する
A 各報道機関は、取材・編集手法に関する報道倫理のガイドラインを制定し、公開する
B 当局取材に集中している現状の人員配置を見直す
C 権力者を安易に匿名化する一方、立場の弱い市民らには実名を求めるような二重基準は認められないことに十分留意する
D 現在の取材慣行は、長時間労働の常態化につながり、女性ら多様な立場の人の活躍を妨げてきたことを反省し、改める
E 倫理研修を強化し、読者や外部識者との意見交換の場を増やす
 旧来型取材に対する、かなり根源的な問題提起だ。こうした動きが取材手法の改善にどの程度結びつくかを、見守っていきたい。

藤森研(JCJ代表委員・朝日新聞記者OB)
posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする