2020年07月24日

【おすすめ本】後藤逸郎『オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側』─巨大ビジネスに翻弄される実態を暴き意義を問う=薗田碩哉(スポーツジャーナリスト)

 平和の祭典「オリンピック」という錦の御旗はすでにボロボロに劣化し、金と醜聞にまみれた巨大ビジネスになり果てている。本書はその実態を、丹念な取材とデータ分析から詳述している。
 クーベルタンが理想を掲げて再興した近代オリンピックだが、1980年のモスクワやそれに次ぐ84年のロサンゼルス大会でのボイコット騒ぎに見るように、オリンピックは常に政治に翻弄され続けてきた。
 オリンピックを主宰するIOCは年間1500億円もの収入を挙げる。その73%はテレビ放送権料、次いでトップ・スポンサー料が18%を占める。IOCはテレビとの癒着、グローバル企業の抱え込みに邁進する。

 その結果、オリンピックは世界のスポーツ興行界の歯車に組み込まれ、身動きが取れなくなっている。開催費用は増す一方で、いまや開催都市に名乗り出るのも二の足を踏む状況だ。トップ・スポンサーのマクドナルドの撤退も大きな話題となっている。
 日本は「アンダーコントロール」との嘘までついて開催を勝ち取った。だが開催の決定以前から競技場の拡張を画策し、隣接の都営アパートを追い出す計画まで進められていた。その狙いは、オリンピックにかこつけて神宮外苑地区の再開発をもくろむ衝撃の事実も、本書で明かされる。
 コロナ禍による延期は天の配剤と言うべきだろう。これを機にオリンピックそのものを根底から見直す必要がある。本書は歯切れのよい文章で、その理由を明示してくれる。(文春新書800円)
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posted by JCJ at 08:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする