2020年07月26日

【今週の風考計】7.26─「陸・海・空」から宇宙へ拡大するミサイル防衛の怖さ

★政府は、4500億円もの巨費を投ずる迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を断念した。設置予定の秋田県からの強い反対に加え、検討すらしていなかったブースター落下の危険、さらにこれを統御する追加改良への疑問が募り、すでに米国企業に支払った200億円は戻らないのを承知で決断した。
 しかし自民党と安倍政権は転んでも只では起きない。ミサイル防衛を巡り「敵基地攻撃能力」の保有や「陸・海・空」のみならず宇宙にまで広げる軍事計画へと、議論を加速させている。9月にも国家安全保障会議(NSC)で方針をまとめるという。
★計画断念に至る経緯も検証せず、いきなり「敵基地攻撃能力」の保有に奔るとは呆れる。自民党内からは「自衛反撃能力」と言い換え、「専守防衛」の範囲内と強弁し、本質を隠ぺいする姑息な動きも強まっている。

★とりわけ北朝鮮の軍事動向に対応する議論は、危険きわまりない。北朝鮮の弾頭ミサイルは日本全域を射程に収め、発射台つき車両に搭載のうえ地下施設に収容されている。
 すでに数百発は保有し、短時間で発射できるよう実践配備している。さらにミサイルの種別や運用方法も多様化し、同時発射能力や奇襲能力などを高めているという。
 日本による「敵基地攻撃能力」の保有が、北朝鮮のミサイル発射を抑止する保障など一つもない。かえって日朝間の緊張を高め戦争誘発へと導きかねない。
★来年3月には海上自衛隊イージス艦8隻の態勢が整う。防衛省は、さらに2隻増やす検討に入った。日本海に2隻配置し展開すれば、日本のほぼ全域に飛来する北朝鮮からの弾道ミサイルを迎撃できるという。本当かいな。
 しかも2隻で計4千億円の建造費と600人の乗組員が必要となる。コロナ第2波の襲来で未曾有の規模の財政支出が必至、かつ景気低迷が続く中で、さらなる予算計上が許されるのか。訓練も含め600人の乗組員の確保だって、ただでさえ自衛隊員の募集がままならない中で、本当に可能か。

★防衛省は、さらに中国海軍の尖閣諸島への接近など、中国の軍事攻勢に神経をとがらせている。中国は日本を射程に収める弾道ミサイルの増強や宇宙空間での軍拡、マッハ5を超える極超音速ミサイル兵器の開発に傾注している。
 そこで防衛省は、コロナで緊急事態宣言が出されている5月18日、航空自衛隊に部隊員20人の「宇宙作戦隊」を創設した。東京・府中基地を拠点に、将来100人態勢を目指し、昨年末に発足した米国の「宇宙軍」と連携を強めている。
★背景には宇宙空間に広がる中国・ロシアの軍事的脅威がある。航空自衛隊「宇宙作戦隊」が取り組む、人工衛星の防衛や衛星キラーおよび発射ミサイルの早期探知などは、宇宙空間で展開される米・ロ・中の軍事作戦に巻き込まれる危険は大きい。
 いや防衛省は積極的に、電磁波を使って他国の衛星通信を妨げる装備の開発や日本独自の宇宙監視衛星の打ち上げすら計画している。安全保障の基本方針である「専守防衛」を踏み外すことに、つながりかねない。
★安倍首相に問う、コロナ禍の中、1か月以上も記者会見すら開かず、国民の前から雲隠れしている陰で、憲法「九条」をぶち壊す策動をしているとは、どういう神経か。(2020/7/26)
posted by JCJ at 08:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする