2020年08月10日

【リアル北朝鮮】 与正氏、男女平等の証? 新興富裕層も女性が多い=文聖姫

  本欄でも再三書いてきたが、金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正党第1副部長の台頭が著しい。正恩氏の妹で故金正日総書記の娘だとはいえ、北朝鮮で女性がこれほど頭角を現すのはかつてなかったことだ。金総書記の妹である金慶喜氏も、党で軽工業部門を担当するなど要職を務めてきたが、表立って活動することはなかった。ましてや、兄に代わって談話を発表したりすることなど皆無だった。
 ところが、金正恩時代になってからは、妻の李雪主氏が「女史」と呼ばれて夫とともに公に活動し、妹は「兄の分身」として活動の幅を広げている。北朝鮮で女性に対する考え方が変化してきている証ではあるまいか。
 1946年7月30日、北朝鮮臨時政府は解放からわずか1年後、男女平等権法を発令した。法的には男女平等が確立したわけだが、儒教精神が根強い朝鮮半島で、男女平等が簡単に浸透するはずもなかった。
 96年に朝鮮新報特派員として平壌に滞在していた際、男女平等権法発令50周年の現状を取材した。その際、ある男性が語っていた言葉がいまでも忘れられない。
 「男女差別というものは、アスファルトに生える雑草のようなものだ」と彼は言った。採ってもとっても生えてくる、そんなに簡単になくなるものではないと。平壌市の区長を務める妻に代わって料理も担当していたが、料理作りの場面を写真に撮ろうとしたら、かたくなに断られた。「男が料理する場面など撮られてたまるか」というわけだ。そんな北朝鮮で、たとえ金ファミリーの一員とはいえ、女性が活躍するのは悪くないと思う。
 ネットフリックスで配信中の韓国ドラマ「愛の不時着」には、北朝鮮で財を成した女性実業家が登場する。彼女は夫を亡くした後、自らの力でデパートを経営するまでになった。もちろん、これはフィクションだが、私が取材した限りでも、「金主」と言われる新興富裕層には女性が多かった。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする