

NHKはこの8月4日、2021年〜23年度の中期経営計画を発表した。NHKのこの計画は安倍政権の規制改革推進会議に迫られたもので、その意向に応じて、2023年度までに2波あるAMラジオの一本化、NHKBS1の放送の廃止を行うとともに受信料収入を6000億円台に抑制する。
受信料合憲で拍車
NHKは2018年12月から衛星放送による、4K,8Kの2チャンネルの放送を開始した。新型衛星によるスーパーハイビジョン放送であり、受信するには新型受像機が必要だ。
さらに2020年4月から、NHKの総合とEテレの番組をインターネットで視聴できる「NHKプラス」が開始された。このシステムでは番組検索の機能があり、「見逃し番組」を見られるほか、追いかけ再生もできる。「NHKプラス」は放送の補完サービスであるため、受信契約者の家庭では、申し込めば誰でも視聴できる。
このようにNHKは巨大化を進めてきた。それに拍車をかけたのは2017年12月に最高裁が「受信料徴収は合憲だ」との判断を示したのがきっかけだ。
巨大単一メディア
NHKの受信料不払いが減少し、経済不況が進行したにもかかわらず、受信料収入は700億円を突破、増収傾向がつづいた、
しかし政府の規制推進会議はインターネット時代の於ける「通信と放送の一体化」を目標にして、NHKにネットの同時放送を認める一方、放送分野での拡大路線に若干の歯止めを加えたいという意向をもつ。これまでのNHKの拡大路線に対しては、新聞協会や民放連も一定の抑制を求め
てきた。
NHKは2年前12月に鳴り物入りで4K,8Kテレビ放送を開始した。現在受信機出荷台数は477万台(7/21A-PAB調査)といわれるが、NHK受信契約合計は45,227,630万件(2020年4月末)の10.5%にすぎない。
一方、インターネット上で視聴できる「NHKプラス」は、NHK総合とETVが視聴でき、見逃し、追いかけ視聴もできる「NHKプラス」は開始早々に契約申し込者が30万世帯を突破するなど、好調な滑り出しだ。
NHKの持つチャンネルは、AMラジオ2チャンネル、FMラジオ1チャンネル、地上波テレビ放送2チャンネル、衛星テレビ2チャンネル、高精細度衛星テレビ(4K,8K)2チャンネル、ネット配信NHKプラス(総合、ETV、見逃し、追いかけ)の10種類。
このほかにもNHKは海外向けに、NHKワールドテレビ(英語)、NHKワールド・プレミア(日本語、海外居住日本人向け)、NHKワールド・ラジオ日本(1言語)、NHKワールド・オンラインなどを持つ。
受信契約世帯数4522.7万世帯(2020年)、総収入7204億円(2020年度)、従業員数10,343人(2020年度)、関連会社14社、世界にも類をみないほど巨大な単一メディアだ。
8K放送打ち切り?
NHKの基礎は、7000億円を越える受信料収入だ。一時期受信料不払いに悩まされた時期もあるが、2017年末に最高裁判所が「受信料合憲」の判断を出して以降、受信料収入は右肩上がりだ。
2019年10月、政府の要請を受けたこともあり、受信料支払いに伴う消費税の引き上げを行わず(実質2%の引き下げに相当)、更に2020年10月にさらに地上契約、衛星契約の受信料をさらに2.5%引き下げることも予定した。受信料収入は6000億円台に抑制するのだという。
前述のようにラジオ(第二)とBS1を削減するほか、実際にはほとんど見る人がいない8Kテレビもいずれ放送を打ち切るだろうといわれている。
8Kはもともと2020年に開催するはずだ「東京五輪を8Kで全世界に放送したい、デジタル技術力を世界に誇りたい」という安倍首相とNHKの思惑が一致して出現した。しかし、来年夏に東京五輪が開かれるかどうか、疑問視されている。今やほとんど無用の長物と化した8Kテレビ衛星は五輪に備えて、建前上2021年秋までは上空に止まるであろう。
拡大路線からの転換というが、NHKが巨大メディアであるということに変わりない。
隅井孝雄(ジャーナリスト)