2020年09月18日

【おすすめ本】水島久光『戦争をいかに語り継ぐか 「映像」と「証言」から考える戦後史』─もどかしい戦争報道の歩み、語り部と対話し問答する大切さ=菅原正伯

 戦争体験を語るさい、「あの戦争」とよぶ人が少なくないのはなぜか。本書はそんな疑問を手がかりに、NHKやTBSのドキュメンタリー番組を主な素材にして、戦争体験を語り継ぐことのもどかしさや難しさの要因を考察している。
 戦後60年(二〇〇五年)、戦後70年(二〇一五年)に、テレビ各局は競って百を超える戦争番組を作った。だが語り部は自分の言葉が聞き手に届かない悩みを、抱えていた。
それは戦後、知識人と大衆、語り手と聞き手に加え、「知る者と知らざ る者」の分断によって、戦争に関わる語り(テレビ報道)が「一方向性」に傾斜したからだと、著者は言う。
 第二章は「戦争を知らない子供たち」と戦争体験者とのコミュニケーションの「断絶」を、フォークソングや戦争マンガの考察から文化的に明らかにし、示唆に富む内容がいっぱいである。
断絶があるがゆえに「問答」や「対話」による克服が大切になるが、原爆など「なぜこんな悲惨なことが…」という聞き手の問いかけは、話し手との圧倒的な情報量の差を前にして、「だから 戦争はいけない」という結論に短絡しがちだったと、著者は指摘する。厳しい批判だが、その底には戦後第一世代の努力にたいし、大いなるエールが込められている。
 語り部が高齢化し「語り手なき時代」の到来が迫っている。それだけに著者はテレビ各局が製作した膨大なドキュメンタリーのアーカイブ化を図って活用することや、この間、戦前のニュース映画や映像の新たな発掘が続いていることに期待を寄せている。(NHK出版1500円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする