2020年09月27日

【今週の風考計】9.27─今こそ必要なコロナに立ち向かう世界の連帯

◆新型コロナウイルスの感染者が、中国・武漢で最初に見つかってから9カ月が経過した。武漢で何が起きていたのか。1月20日に都市封鎖令が出されて以降の状況を伝えるドキュメントが刊行された。
◆方方『武漢日記─封鎖下60日の魂の記録』(河出書房新社)である。一気に読んだ。
 武漢に住む65歳の高名な女性作家が、自身のブログで武漢の実情を、当局の手で削除されたり、中国の極左分子「ネトサヨ」から攻撃されたり、様々な圧力や妨害にもめげず、日記の形で綴った感動にあふれる書だ。
 ⾝近な⼈が次々と死んでいく悲惨な状況、医療現場の疲弊と焦燥、とりわけ殉職医師・李文亮への思い、事実を隠ぺいした当局者への怒り、メディアの怠慢など、著者の目線の厳しさが、ひしひしと伝わってくる。
 武漢だけで感染者5万人、死者3800人という深刻な結果となったが、それに立ち向かった庶民の苦労や悲哀へ注ぐ目線は極めて温かい。

◆いま武漢はコロナ感染が収束し、10月1日から8日までの「国慶節」の連休には、武漢の名所「黄鶴楼」への旅行が人気トップだという。中国内を6億人も移動するが、コロナ感染拡大の懸念はないのか。いま中国全体で感染者9万人・死者4700人に上るというのに。
◆さらに深刻なのは世界全体で感染者3257万人、死者98万人を超えたことだ。感染者が最も多いのは、先進国ナンバーワンの米国で703万人、2位インド590万人、3位ブラジル468万人となる。上位3カ国に世界の感染者の54%が集中する。
 しかも米国は死者が20万人を超え、今もなお1日に新規感染者が5万人もふえ、かつ1日に960人近くが死亡するという、世界各国の中でも最悪の事態が続いている。

◆だがトランプ大統領は、国連総会の演説で「武漢肺炎によるパンデミックを引き起こした原因は中国にあり、責任を取らせねばならない」と激しい言葉で各国に同調を促した。
 その背景には、トランプ大統領が11月3日の選挙で再選を狙うため、感染防止対策を軽視した責任を中国に転嫁し、自らの「コロナの影響は大きくない、8月にも沈静化する」との発言を取り繕うためといわれている。
◆75周年となる国連のグテーレス事務総長は「コロナの感染拡大は医療危機、経済不況と大量失業、さらに人権侵害という脅威を同時にもたらしている」と述べ、危機打開に向け各国に結束と連帯の必要性を訴えた。
 自国第一主義による他国非難や経済制裁をやめるよう促し、さらにはコロナ・ワクチンの自国向け独占取引・ウラ取引など、いわゆるワクチン国家主義へ警鐘を鳴らした。

◆いま欧州ではコロナ感染がフランスやスペインで1日に3万人の規模で増え、集会や外出の禁止など、再規制に躍起となっている。
 ところが菅政権は「Go Toキャンペーン」を拡大し、さらに全世界から外国人の入国受け入れを決めた。当面は3カ月以上滞在する医療従事者、スポーツ選手、留学生などに限るとはいえ、解禁で感染拡大の危険が強まるのは火を見るより明らかだ。止めたほうがいい。(2020/9/27)
posted by JCJ at 08:00 | 【今週の風考計】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする