横浜カジノの予定地とされる山下ふ頭に隣接する山下公園で8月22日に行われたカジノ反対市民集会に引き続いて、いよいよ9月4日から住民投票実施のための署名活動がスタートした(写真)。今のところ滑り出しは順調だが、期間が2カ月間と決まっていて、この間に最低6万2万筆を集めなければならない。直接請求の署名活動は詳細が法律で決まっていて、ただ署名を集めればいいというわけではなく、まず署名を集める受任者というものを登録しなければならず、この受任者が集めた署名簿でなければならない。
署名活動を進める「横浜カジノの是非を決める横浜市民の会」では今回の署名スタートまでに受任者を実に4万3千名集めて背水の陣で臨んだ。つまり、受任者1人が自分を含めて2名署名すればゆうに6万筆を超えるが、会では、市長リコールが出来る数の50万をめざそうと勢いを上げている。
ここにきて、林文子市政を支える保守層からもカジノ誘致反対の声が上がりはじめている。港湾運送事業の発展を推進していて、山下ふ頭の地権者である横浜港運協会はカジノに反対し退去はしないと明言している。また神奈川県議会議長や自民党県連代表を長年歴任した保守の重鎮もカジノ不要を表明している。
さらに9月の横浜市議会では自民党市議からも市長に対しIRカジノについて事業効果を再確認する必要があり、事業の推進は冷静に進めるべきとの意見が出された。その後、誘致撤回を求めている野党側の要望書に対して市長は「国家プロジェクトだが、むちゃぶりできない」と回答、会見で本年度の関連予算の減額と来年度の事業費見直しを示唆した。
かつてIRカジノはトランプ米大統領による開放圧力と噂されたが、すでにラスベガス・サンズ等の米国系事業者は撤退している。世界のカジノ事業者はコロナ禍で財務内容が悪化しており新たに投資するような余裕はなくなっている。秋元司衆議院議員の再逮捕でカジノ整備法の基本方針はさらに厳格さが求められることになる。すでにIRカジノ構想は破綻している。
日本に興味を持って観光で訪れるアジアの人々をギャンブルに誘い込み、持ち金を巻き上げて市の財源にすることに全く道理はないし、また行政が博打を市民に奨励することなどあってはならない。
伊東良平