2020年10月06日

【おすすめ本】 左右社編集部編『仕事本  私たちの緊急事態日記』─コロナ禍のなか77人が綴るテンヤワンヤの貴重な記録に乾杯!=南陀楼綾繁(ライター) 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都などに緊急事態宣言が発令されたのが4月7日。
 その日に原稿依頼を始め、さまざまな仕事に就く77人に月末までの日記を書いてもらったのが本書だ。刊行は6月末。
 編集者によると、寄稿を断る人も締め切りに遅れる人もいなかったという。それだけ切実に伝えたいことがあったのだ。
 いつまで休館すればいいのか悩む映画館支配 人。従来の葬儀ができないことに戸惑う葬儀社スタッフ。練習できないことに焦りを感じるピアニスト。ベルリンで自粛生活を過ごすイラストレーターなどなど。
 水族館では休館中でも動物が運動不足になるのを防ぐため調教を行うなど、その仕事固有の事情が判って興味深い。
 図書館が全面休館したことにより、資料を参照できなくなる校正者の記述には、自分もそうだったと共感する。
 同じ日の出来事にどう反応したかを知るのも、複数の日記を読む面白さだ。星野源に便乗した安倍首相の動画を見て、怒りを表明している人が何人かいた。
 じつはこの本は、出た直後に読むよりは、少し時間が経ったいま、読む方が面白いと思う。あれだけの非常事態だったのにもかかわらず、過ぎてしまうと、だんだん印象がぼやけていっている。巻末の年表とあわせて日記を読むと、そのときそのときの出来事がくっきりと蘇るのだ。
 ところで、この77人に1年後の同じ期間の日記を書いてもらって刊行したらどうだろう? その間の仕事や感情の変化をとても知りたい。私は絶対に買います。
(左右社2000円)
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posted by JCJ at 01:00 | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする