2020年10月15日

【焦点】 デジタル庁こそが監視社会の司令塔だ=橋詰雅博

 菅義偉首相の肝いりで来年新設のデジタル庁は、国や地方の行政データのデジタル化を進め、それを一元管理する。狙いはいまだ2割にとどまるマイナンバーカードの普及に加えてもう一つスーパーシティ計画の推進だ。この計画は国家戦略特区にまるごと未来都市をつくる≠ニふれ込む政官民学あげての大型プロジェクト。しかし、その半面では、役所に蓄積された個人情報はもとよりIT企業のビックデータまでもデジタル庁に集められ、監視社会が強化される危険性がある。
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 街中を自動運転の乗り物がスイスイと走り、遠隔による医療・教育が受けられ、スマホ決済で現金不要、ドローンが配送、行政手続きがスマホで済ませられる―。政府はAI(人工知能)など最先端技術を活用したスーパーシティのイメージをこんな風に喧伝している。
竹中平蔵が旗振り役
 本格的な実現は2030年ごろとするこの未来都市の旗振り役は、東洋大の竹中平蔵教授だ。竹中教授は小泉純一郎内閣時代の総務相で、菅首相はその時、総務省副大臣だった。竹中氏は現在、首相の経済ブレーンである。竹中教授は「(5月に成立のスーパーシティ法)が早く成立していれば、コロナ危機への対応が違っていただろう」とツイッターに投稿している。ただ、具体的な対応は何も示さなかった。
 計画進める民間側を束ねる三菱UFJリサーチ&コンサルティングの村林聡社長は、9月8日の「アフターコロナを考える」Webライブセミナーで、デジタル庁創設にふれている。
 「昨年暮れ『デジタル・ガバメント実行計画』(行政サービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現)が閣議決定されました。これを進めるためには『デジタル庁』といった権限のある組織をつくり、司令塔にする。国のリーダーシップが必要です」
全個人データを入手
 政府側もスーパーシティ計画に入れ込む。6月末のオンライン特別セミナーに登場した内閣府地方創生推進事務局の村上敬亮審議官は、こう語った。
 「中国のアリババ系列会社が行政と連携する杭州市では、交通違反や渋滞対策にAIを活用し、無人コンビニで顔認証でのキャッシュレス支払いを実施している。ものすごい勢いで技術を使いこんで熟度をあげて、それを広げている。日本にも必要な技術はほぼそろっているが、街で住民を相手に複合サービスを実施した実績がない。関わる事業者が利益を得られるビジネスモデルを構築するためにも早く実践する場が欲しい」
 デジタル庁が中核となるスーパーシティ計画だが、大きな問題がある。スーパーシティ実現には個人情報が必須だ。国家戦略特区では民間事業者が国や地方の個人情報の提供を受ける。事業者もビジネスで得た個人情報などからなるビックデータを持っている。 
 デジタル庁は特区の事業者の全個人情報の入手可能となる。事業者が得られた個人情報をビジネスに不正利用するかもしれないし、なによりデジタル庁が個人情報の管理をどういう風にするのか、特区住民とどう合意にするのかがあいまいのままだ。知らぬ間にプライバシーを侵害された上に、積み上げられた個人データをもとに政府から監視を強化されかねない。
トロントは計画中止
 中国を始め欧米ではスーパーシティと同じような未来都市の実証実験がスタートしているが、住民の反対で計画が中止に追い込まれた都市がある。カナダのトロント市だ。
 未来都市を運営するグーグルの子会社は、データ収集のため街中に多くの監視カメラを設置するなどを市や住民に提案した。
 しかし、プライバー侵害発生時の対応計画や個人データ保管に関する明確な方法の必要性について、住民への説明が不十分だった。このため住民の同意が得られなかった。また、コロナ禍の影響で都市への人の流入が減少し、利益が見込めないとグーグルは判断。こうしたことで5月に撤退した。運営会社が身を引いたことでトロント市は計画を断念せざるを得なかった。
 カギを握る個人データの管理について、村林社長は「個人データの扱い方では、誰が何のためにデータを使うのか説明し、本人の了解を得て進めるのが原則だ。(日本が手本とする)エストニアは誰がいつ自分の情報を使ったか、住民が請求すれば公開している。日本でもそういう対策をする必要がある」と指摘する。
 だが、その前に欧州と比べて不十分な国民のプライバシーが守られる規制・ルールづくりをすべきだろう。これをないがしろにして、スーパーシティ計画を隠れ蓑に監視社会が進められ、築かれようとしている。
 来年3月ごろには国家戦略特区に指定されて、スーパーシティの実証実験が行われる5自治体が決まる見込みだ。
橋詰雅博
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posted by JCJ at 01:00 | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする