2020年10月28日

【リアル北朝鮮】 3つの台風 被害甚大 経済の仕切り不可避=文聖姫

 3つの台風が北朝鮮を襲った。被害は甚大だ。朝鮮労働党の金正恩委員長は自ら各被災地に足を運んだ。北朝鮮の最高指導者が被災地を訪れるのは珍しいことだと思われがちだが、実は金委員長は数年前、中朝国境沿いの羅先で水害が起きた際にも、被災地を訪れ、壊された家屋の復旧を軍人らに命じたことがある。
 今回も黄海南北道や咸鏡南北道の被災地をただちに訪れた。黄海北道行きでは自ら車を運転した。咸鏡南道の被災地からは、平壌市の朝鮮労働党員に向け、被災地に来て復旧作業を手伝ってほしいと要請する公開書簡を送った。最高指導者が被災地から支援を要請するなど、私が記憶する限りなかったことだ。それだけ事態が深刻だということだろう。確かに、北朝鮮の代表的な亜鉛産地である剣徳鉱山や3大マグネサイト産地の大興・龍陽・白岩鉱山など、「経済の重要命脈」も被害に合った。
 それでなくても、新型コロナの影響で北朝鮮はいち早く国境を封鎖した。外国との経済関係は寸断状態で、経済は低迷している。今年は2016年に開催された第7回党大会で示された「国家経済発展5カ年戦略」の最終年にあたる。決められた達成目標があったはずだが、それも頓挫しているようだ。
 「朝鮮中央通信」によると、9月8日に開催された党中央軍事委員会で発言した金委員長は、予想もしなかった台風被害によって、国家的に推進してきた年末の闘争課題を見直し、その方向を変更せざるを得ない状況に直面したと語った。年末の経済計画を遂行できなくなったから、方向転換せざるを得ないということだ。北朝鮮では、10月10日の朝鮮労働党創建75周年に際して、平壌に総合病院を建てる計画などがあった。完成をあきらめざるを得ないかもしれない。
 北朝鮮では来年1月、第8回党大会が開かれ、「国家経済発展5カ年計画」が発表される。経済の仕切り直しが不可避な模様だ。
 文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年9月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする