2020年11月04日

【リアル北朝鮮】 国威発揚と米国向け 新型ICBMの公開=文聖姫

 真夜中の軍事パレードには度肝を抜いた。朝鮮労働党創建75周年を迎え、10日に平壌の金日成広場で行われたパレードは、同日午前0時前に始まった。世界を驚嘆させる北朝鮮特有の演出だったのか。
 そのパレードでは、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)と見られる兵器も登場した。米本土を射程に収めるとされる「火星15」は9軸18輪だったが、今回登場した兵器は11月22輪で、「火星15」より長い。新型の潜水艦弾道ミサイル(SLBM)と見られる兵器も登場した。金正恩党委員長は演説で、「自衛的正当防衛手段」としての戦争抑止力を強化すると述べ、今後も核・ミサイル開発を進めることを示唆した。一方で、こうした戦争抑止力を「先制的に使うことはない」と強調した。
 新型コロナ禍で北朝鮮は年初から国境を完全封鎖している。中朝貿易額も大幅に減少するなど、経済への影響は少なくない。さらに追い打ちをかけたのが3つの大型台風だ。水害復旧作業に追われ、経済停滞を余儀なくされている。党創建に際して平壌にオープンするはずだった総合病院が完工したというニュースは、現時点では入ってきていない。そのような状況下でも、あえて軍事パレードを挙行し、新型兵器を披露した意図はどこにあるのか。
 一つは、国威発揚という側面があるだろう。苦しい生活が続く国民に新型兵器を披露することで、その苦労が報われていることをアピールしたいのかもしれない。
 ただ、やはり米国に向けたメッセージだと見るのが自然だろう。昨年2月のハノイでの米朝首脳会談が決裂して以降、米朝関係に目立った進展はない。北朝鮮はおそらく、11月の米大統領選挙の結果を受けて、次の対米政策を詰めていくだろう。その前に米国をけん制する意味もあると思う。大統領が誰になろうと、北朝鮮と交渉せざるを得ない「交渉材料」を示したのかもしれない。
文聖姫(ジャーナリスト・博士)
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号

posted by JCJ at 01:00 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする