2020年11月09日

【月刊マスコミ評・放送】 NHKラジオ総合は人身御供か=三原 治

 民間放送からすれば、NHKの肥大化は批判の対象である。私も個人的には、大き過ぎるNHKは反対だ。民放のような番組を制作する傾向が一番気にくわない。公共放送としての番組作りに徹して、NHKにしかできない放送を大事にして欲しい。
 8月に出された来年度から3年間の次期経営計画案を知って怒りを覚えた。拡大した業務のそぎ落としで、3年間に630億円削減するのはいい。ターゲットとなったチャンネルの再編が問題だ。
 4つの衛星放送のうち、「BS1」「BSプレミアム」「BS4K」の3つを段階的に1つにする。こちらは百歩譲って、まだ許せる。憤慨したのは、ラジオのAMの第1と第2を統合すること。総務省からの「業務のスリム化・受信料の見直し・ガバナンスの強化」に応えるなら衛星放送だけで充分だろう。AM放送を1波にして、どれだけ経費削減になるのか。
 AMラジオは、災害時の重要な情報インフラだ。語学講座もNHKならではの特色である。このAMラジオの第1と第2を一波に統合する方針には、断固として反対したい。
 AMラジオの存在意義は、災害発生時にその優位性が明らかだ。NHKラジオは、防災情報の伝達手段として大きな役割を果たしてきた。音声のみのラジオは、テレビよりも簡単に番組の放送予定や内容を変更できるため、災害の状況に応じて情報を発信できる。ラジオ放送の設備の被災を想定して2波を確保しておくことは重要である。
 近年の災害では、避難所でスマートフォンを利用する際の電源確保が課題になっている。ネットで情報を探せるスマートフォンは有用だが、充電しなければ長時間使用はできない。省電力のラジオは乾電池だけでも何日間も連続で聴取できる。
 さらに第2での語学放送は多くの人に支持され、英会話を学ぶ大勢の聴取者が英語や外国語をマスターしてきた。語学放送は、テキスト代だけで済むのでコストパフォーマンスも高い。統合で、語学放送が減らされたら、日本の語学教育にもマイナスである。他にも、NHKラジオアーカイブスや視覚障害ナビラジオ、社会福祉セミナーなど、公共放送だからできる番組も貴重だ。
 肥大化への批判に対しての人身御供にされる「NHKラジオ統合」。音楽配信なども参入し、ネット経由の音声メディアは多様化しているが、ラジオはライフラインの重要なひとつである。すべての人に「安全・安心」と「正確、良質で多様なコンテンツ」を届けるのが、公共メディア・NHKのめざすべき道ではないだろうか。 
三原 治
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年10月25日号

posted by JCJ at 01:00 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする