■「小春日和」とはいえ、歩くと汗ばむほどの陽気。この週末、東京郊外にある庭園を訪ねた。
一つは滄浪泉園。JR武蔵小金井駅南口から連雀通りを西へ、高等学校の前に入口がある。武蔵野・国分寺崖線の「ハケ」という立地特性を活かし、湧水を取り入れ深山の趣そのまま生かした、実業家・波多野承五郎の別荘庭園だ。
■まだ青いモミジで覆われた門をくぐり、丸石がびっしり敷き詰められた道を行くと、視界が開け東屋に着く。そのわきに水琴窟がある。ツクバイから湧水を柄杓で掬い足元の石積みにかける。キンコンと余韻を残して響く。
■さらに急な細い道を蛇行しながら下ると、ブナやケヤキ、アカマツ、モミジなどの樹木の間から、きらめく水面が見えてくる。こんこんと湧く武蔵野の清水を湛え、モネが描く水連の池を思い出させる。
クヌギ、コナラ、シイの黄色い葉が、木漏れ陽を浴びてキラキラ光りながら池面に散っていく。周辺の高い樹木の間からもれる光が、何本もの細い柱となって天から差し込んでいるような幻想にかられる。
ふと高校生時代に取り組んだメルヘン劇、フーケーの「オンディーヌ」がよみがえり、妖精が躍っているような気配に、あたりを見回してしまった。
■モミジが真っ赤に色づくのは、あと2週間後だという滄浪泉園を後にして、脇の坂を南へ下り、右折すると新小金井街道にぶつかる。目の前に「大勝軒」の看板が。あの元祖つけ麺で有名な店。すぐ飛び込む。懐かしい「特製中華そば」が空腹を満たす。
午後は野川沿いの遊歩道を、ゆっくり西へ西へと歩く。カモが5匹ほど川べりで水遊び。しばらくすれば東経大の構内にある新次郎池、だがコロナ禍で閉鎖。がっかりしながら国分寺方面へ。
■二つ目は殿ヶ谷戸庭園。大正時代に江口定條が<随♂>と名づけ、三菱財閥・岩崎彦弥太が別荘とした近代日本庭園だ。高低差を楽しむ回遊式林泉庭園と茶室<紅葉亭>がある。
これまた国分寺崖線の「ハケ」を活かし湧水を取り入れた「次郎弁天池」の周辺には、モミジの木が多い。色づくと圧倒されるような景色が、高台にある<紅葉亭>から眺めると、眼下に広がるという。だが、またまたモミジは青いまま。
■さらに武蔵国分寺跡に向かう道の周辺には、「お鷹の道」や「真姿の池」があり、湧水「ハケ」が群がる名所となっている。ここにも足を延ばしたいが、もう疲れた。またの機会に譲ろう。(2020/11/22) 写真:滄浪泉園内にある湧水池