2020年12月02日

【北海道支部】核のごみ問題で講演会 北海道新聞編集委員・関口裕士さんが語る パート2=高田正基 10月27日 札幌市教育文化会館

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 幌延深地層研と核抜き条例
北海道は自分たちのところで核のごみの元を作り出している。自分たちが出しているのに、自分たちのところに戻ってくることは許せないという論理がどこまで通用するかはなかなか難しい。ただ、処分場を作るのは全国に1カ所とされている。全国あちこちの原発から送られてくることには反対せねばならないと思うが、泊から出た使用済み燃料をどうするかというのは難しいところがある。
幌延町商工会は3・11前後に「研究だけではもったいない。せっかく穴を掘っているので、処分場を誘致してほしい」と動いた。当時、商工会長は「誘致の意志があることを民間レベルで発信しないと、この町に何も残らない。地元の若者に将来を約束してやれない」と言っていた。今回、神恵内村でも同じようなことを聞いた。人口は800人余りで、どんどん減っていく。「交付金がなくてもいいので、仕事する場が欲しい。調査だけでなく処分場誘致もすべきだ」と言う人もいた。そんなに地元の人ばかりを責められないとも思うが、そういう弱みにつけ込んで、過疎地ばかりに原発や処分場を押しつけようとする国や電力会社のやり方はおかしいと思う。
幌延は、もともと20年間の約束で研究を始めたが、今年になって研究期間の延長が決まった。8年、9年というがよく分からない。まだまだズルズル延びそうな感じがある。地下500メートルまで掘りたいということを延長決定後に言ってきた。研究なら続けてほしいという声が地元にある。国も、幌延は手放したくないので、ズルズルと研究がいつまでも続くのだろうと思っている。
幌延で研究を受け入れるのと引き換えに、道は2000年に条例を作り、核のごみは「受け入れがたい」と宣言した。ただ、罰則のない宣言条例だ。どこまで効力があるかは疑問視されている。実際、近藤駿介原子力委委員長(当時)は「条例があるからと言って核のごみを持ち込めないなら。47都道府県全て作る。そうしたらどこにも持ち込めなくなる。だから条例は気にしない」と言っている。彼は今、NUMOの理事長となったが、「条例制定当時より処分技術は進歩している。北海道発展のために勉強してほしい」とインタビューに答えている。
道条例には、こうも書いている。「現時点では、その処分方法の信頼性向上に積極的に取り組んでいるが、処分方法が十分確立されておらず、その試験研究の一層の推進が求められており、その処分方法の試験研究を進める必要がある」と。つまり、「研究が進んでいないなら、受け入れがたい」という内容だ。近藤氏は「当時より進歩しているので、そろそろ受け入れて」ということだと思う。道条例は骨抜きにされている。ただ、全国47都道府県で条例があるのは道だけだ。そこで2カ所も候補地ができることを皆さんはどう思うか。
最近話を聞いた専門家は「道は条例があるからこそ、手を挙げやすい」と言っていた。多くの自治体では、現首長は処分場までは反対だが、交付金が欲しいので文献調査に手を挙げる。道は条例があり、知事も反対してくれるので、最終処分地の決定までは行かないだろう。だからこそ手を挙げやすい−と分析していた。なるほどな、と思った。道内で今後も名乗りを上げるところが出てこないとも限らない。

 調査受諾で原発マネーの「麻薬」
寿都と神恵内が手を今挙げているのは、2年間の文献調査という第1段階。自ら手を挙げた寿都と、国が申し入れた神恵内の2パターンがある。その後、4年間の概要調査、10年間の精密調査、処分場建設という流れになる。国の資料は今も、精密調査を決めるのは平成20年代半ば、第3段階は平成40年前後をめどとしている。国の計画は完全に破綻しているが、そのまま通している。
神恵内村はほとんどが不適地だが、国は、海底下での処分も考えている。ごくわずかな陸上適地に施設を作って、そこから海にトンネルを掘り、海の底の下で処分するならできると国は言っている。
寿都町は人口2907人、本年度の一般会計52億円。神恵内は823人、35億円。財政規模の小さいマチに押しつけようとしている。文献調査を受け入れると、2年間で最大20億円が入ってくる。520万円の年収の人に100万円が入れば、それなしでは生きていけなくなる。財政がまひしてしまう。まさしく麻薬だ。しかも文献調査は、現地で行うのではなく、東京でパソコンを見て資料を調べるだけ。国は最近、「対話の期間」と強調しており、原子力マネーを実感させる期間と考えている。

 候補地を手放したくない経産省
国は、核ごみ処分にかかる費用を総額3.9兆円と言っているが、全然足りないと思う。福島事故後、電力11社で工事費は5兆円以上かかっている。福島第1の後始末、廃炉、賠償などにかかる費用は16年末試算で21.5兆円だ。福島の後始末は何も生み出すものではないが、皆さんの電気料金からも回っている。
20兆円と20億円を比べると、原子力ムラから見ると、微々たるもの。小さい村が喜んでくれるなら、20億円なんて簡単なものだ。自治体からどんどん手が上がって、もし10カ所20カ所になっても、20カ所でも400億円。痛くもかゆくもない。その構図が原子力ではとても問題だ。過疎の村に原発を造るには巨額が投じられてきた。今後、処分場もカネの力に任せた形で進むのではないかと危惧している。
2000年の核ごみ処分に関する法律には「経産相は概要調査で知事、市長の意見を聞き、尊重せねばならない」と書かれており、鈴木知事は「概要調査に行くなら反対する」と明言している。「十分に尊重」というなら、反対するならやめるのかという問題になる。9月2日に梶山経産相から片岡寿都町長に届いた手紙には「途中で反対すればやめられる」と書いてあった。ただ、その直後に道新は「知事が反対しても国はその場所を諦めるわけではない」という記事を書いた。経産省は激怒したが、「白紙撤回する」とは決して言わない。なぜなら、反対している間は先に進まないが、知事も首長も代わる。あるいは代えればいいということだ。
この記事が出た後、道庁が経産省に問い合わせた。担当者は「最終処分場法上の処分地選定プロセスから外れることになる」と9月中旬以降、言い出した。初めて出てきた話だ。あえて入れたかもしれないが、「プロセスから外す」と言っても、次の段階で戻す可能性もある。白紙撤回とは決して言っていない。

 関心を持ち続けてほしい
道新データベースによると、「核のごみ」が出た記事は19年に104件だったが、寿都の応募が表面化した8月13日以降で519件に上った。一方で、「原発」は11年に10539件あったが、19年は1000件台にまで減った。新聞は読者の反応で記事の取り上げ方も変わる。世間の関心を反映していると思う。核のごみも長い時間がかかる。調査だけで20年間かかる。関心を持ち続けてほしい。
私たちはどう考えるべきか。これ以上やっかいな核のごみを増やさないように原発はやめるべきではないかという議論が出ると、国は「そこは切り分けて」と言う。国は「対話」と言って「理解」を求めようとするが、対話は、相手が言ったことに反論できる関係でないとできない。もう一つ、原発の恩恵を受けてきたから一人一人が自分事として考えるべき問題なのか。北海道には核燃料があるのに、ごみは嫌と言えるのか。私にも結論がないので、皆さんご自身に考えてもらいたい。
道には省エネ新エネ促進条例というものがある。そこには「原子力は過渡的なエネルギーで、脱原発の視点に立って・・・」と書いている。条例で脱原発の視点というのをうたっている。原発はやめた方がいい。でも、核のゴミの問題はなかなか難しいところがあると思っている。
 高田正基
posted by JCJ at 01:00 | 北海道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする